
? 調査研究の結果
1. ムース化油焼却処理の原理と方法
1.1 ムース化油焼却の意味と位置づけ
衝突、乗揚げ等の何らかの事故により船舶に積載された石油類や燃料油が海上に漏れたとき、その流出油は気象、海象などの条件によっては俗にムース化油と呼ばれる粘稠な半固体となる。このムース化油とは科学的には油を分散媒、水を分散相とした液体分散系とみられ、その外観が洋菓子のチョコレート・ムースに似ているところから、その名がついたと言われる。エマルジョンの一種であり乳化の進んだものは弾力性をもつが、一般には多少流動性があり、石油でありながら燃えにくいという特性がある。
よって、このようなムース化油が沿岸に漂着すると、そこの海水と海岸を著しく汚染し、海洋生物にも大きな被害を与える。このため以前からこの除去は環境汚染防止の視点から強く求められていたが、これまで適切な方法が見出されておらず、最終的には人手による回収という人海戦術に頼らざるを得ないのが現状である。
それでは、どうしてそのような状況に置かれているのだろう。そこで次には現在油防除に使われている方法を洗い出し、それらがムース化油の処理に適用しにくい理由を考えてみよう。
まず最も一般的に考えられるのがその機械的回収である。この方法はもしそれが技術的に、また経済的に効率よく実施できるなら優れた油防除の対応策である。しかし、ムース化油が海岸やそれに近い浅瀬に漂着している場合に、それを効率よく機械的に回収することは技術的に極めて難しく、現在そのための適切な機器も開発されていない。このことは海岸の砂や岩に付着した粘欄な油を機械で回収するケースを想定してみれば、それがいかに厄介な問題であるかが分かろう。
しかも、たとえムース化油が何らかの方法により回収されたとしても、それだけでは問題は解決しない。なぜなら、回収した油はそれを再利用するか、ないしは廃棄処理をしなくてはならないからである。そこでは仮貯蔵、運搬、処理といった引き続いた過程が必要となる。特にムース化油の場合には、それを利用する方策はないから、そのものは廃棄処分をする以外になく、最終的に陸上施設で焼却
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