平成8年春季講演論文概要(論文集第179号)
[1]境界要素法による翼付き没水体まわりの流れの計算
増田聖始、笠原良和、芦立勲(NKK)
近年、船舶の新しい輸送形態を目指し、様々な高速艇の開発が行われている。この中で水中翼と没水体を組み合わせることで大型船の高速化を実現しようとする研究関発が行われている。ここで問題となるのは没水体、水中翼、自由表面の相互干渉である。本研究では境界要素法を用いてこれらの相互干渉問題を数値解析すると共に、水槽試験により水中翼面上の圧力計測を行い計算結果の検証を行った。また、没水深度影響、翼の最適取り付け位置および最適没水形状についての考察を行った。

[2]変形格子を使った有限体積法によるタンデム水中翼のシュミレーション
川島芙幹(船舶技研)、宮田秀明(東大)
自由表面下を航走する翼列周りには、非常に複雑な流体力学的干渉が存在する。そこで自由表面を持ち、非定常運動する2次元のタンデム水中翼局りの流れ場を、有限体積法により計算し、2枚の翼と自由表面の間に現れる非定常な干渉現象を解象した。さらに物体の運動に対応した変形格子を用いる有限体積法と、運動方程式、制御則を組みあわせた運動シミュレーション法を開発し、2次元のタンデム水中翼船の数値模型に適用した。この運動シミュレーション法は、CFDにより時々刻々得られる流体力を用いるため、タンデム水中翼周りの定常、非定常な干渉を自動的に考慮できるという特徴を持つ。

[3]高アスペクト比近似に基づく定式化による滑走板の未定浸水面形状の決定
松村清重(阪大)、水谷友基(阪大大学院)
滑走能は静止時と滑走時で浸水面が大幅に変化する。本研究は揚力線理論にならった定式化により、滑走時の未定浸水面を境界とする問題の鮮明を試みたものである。翼の弦長分布に相当する浸水長分布を定めるための積分方程式を導き、計算結果と実験結果を比較した。対数非線形項に伴い、滑走状態の分岐が起こる可能性を示し、安定滑走状態の浸水面を得た。また、あまり幅広の滑走板は自由滑走できないことがわかった。

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