日本財団 図書館


 

次に組織外部との情報ネットワークについて述べる、特に市民セクターを取り巻く環境には多様な利害関係者(stakeholders)が存在する9)。非営利組織の事業を成功させるには何が必要なのかを説くマクリーシュによれば、非営利組織の事業を立ち上げる際まず行わなければならないのは、外部環境の分析(extemal analysis)であるという10)。すなわち、その非営利活動は周囲の環境にどのようなインパクトを与え、どのように評価されうるのか、またそこには助成や寄付等をつうじて支援、理解してくれる個人・団体が存在するのか否か、サービスの受け手は満足してくれるのかどうか等、まず周囲の環境との交換関係を鳥瞰し、分析することが非営利組織の事業の第一歩なのである。こうしたフィージビリティ・スタディをつうじて外部環境からの情報を収集することが、組織外部との情報網構築のうえでの基礎となりうる。
またこうした作業は市民セクターが活動を続けるかぎり、継続して実施すべき点でもある。手段や方法はその組織によって異なるであろうが、一般的には会報を定期的に作成、配布するなどの広報活動や、関係する個人・諸団体への面談、活動報告等をつうじて情報を得ているようである。
このように市民セクターは行政、企業組織の場合と比較して、組織内部構造が比較的簡素で、組織外部には多種多様な利害関係者を有している。これは市民セクター特有な点の一つである。したがって、外部情報の収集や外部への情報伝達には時間がかかるが、内部での情報伝達、情報処理速度が速いという仮説がたてられよう。これが立証されるならば、市民セクターとは組織外部のあらゆる環境の変化に対応して、内部組織のマネジメントを迅速に変化、操作できる非常に機動的(agile)な組織であるといえよう。

 

3. 事例研究

 

第2節では市民セクターの組織管理について(1)人的資源管理、(2)資金管理、(3)サービス管理、(4)情報管理、の4つの管理側面について述べた。簡潔にまとめると以下のとおりである。

 

市民セクターは基本的に非営利事業を営む組織であるため、ヒトにかんする管理要件が非常に重要である。リーダーを中心とする管理階層は、組織マネジメントのプロ的ノウハウを行政や企業組織から学ぶべきで、また行政は市民セクターの被管理階層がその活動から得られる満足が、その参加のコストを下回らないよう、支援、連携をはかる努力をすべ

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION