
以上については、次に具体的事例を取り上げてそのなかでさらに検討を加えることにしたい。 3. 東京都地域福祉振興基金の見直し課題
ここで取り上げる東京都地域福祉振興基金は、前述の通知以前に設置され全国に「大きな影響力」を及ぼした経過やトップクラスにある基金額と果実の多さそして財政支援策の充実ぶり、またなによりも不交付団体として独自の取り組みが可能な条件下にある基金制度として重要な位置にある。したがって、この事例の検討を通じて、財政支援策の見直し課題がいかなる内容のものか明らかにしたい。 当該基金の概要は、次のとおりである。まず、1987年4月より東京都地域福祉振興基金条例に基づき設置され、その果実を活用する「地域福祉振興事業」(以下、振興事業)が翌年よりスタートしている。振興事業の目的は、「地域の民間団体等が在宅福祉サービス等の多様な展開を目指して実施する先駆的、開拓的、実験的実践に対して、それらが地域に根ざしたサービスとして安心した運営が確保されるよう助成金を交付することにより、在宅福祉等を推進し、もって、地域福祉の振興を図ること」1。)である。 次に、助成実績について簡単にみておきたい。過年度分については表3a・表3bを、1996年度交付決定状況については表4を掲げておく。前者の特徴をいえば、「先駆的、開拓的、実験的実践」として最重要に位置付けられた有償家事援助サービス・食事サービス・ミニキャブ運行システム・重度障害者自立生活プログラムの4事業の占める割合がやはり高いことが目をひく。後者のそれでいえば、継続事業が件数で83.7%、助成決定額で84.3%に上っていることである。なお、4事業とも、それぞれ定められている助成基準の水準は高く、助成のねらいが民間の在宅福祉サービス事業育成の本格化にある点も見過せない(表5参照)。
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