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第3章 市民セクターへの財政支援

堀雅晴

 

1. はじめに

1996年は、ボランティア活動をはじめとするいわゆる市民セクター活動への支援をめぐる法制度化への展開にとって、大きなステップの年になったのではないだろうか。そのようにいうのも、90年代に入り、とりわけ阪神・淡路大震災以降に民間団体からは当然のこと政府・地方自治体からもさまざまな提言・調査報告等が相次いで発表されるようになったわけであるが、1996年に出された諸成果は内容的にみて市民セクターに関する総合的な実態把握からさらに進んで、専門的で具体的な提言になっているからである1)。また、国会においても、こうした動向に呼応するかのように、与野党からの関係法律案(要綱)の発表、そして新進・連立与党双方からの法律案提出と進み、実際に新進党の法律案(法人格付与・法人税法改正)が委員会審議に付されるまでに至っているからである2)。

そこで本章は、早晩こうした立法化に付随して生じることになるだろう既成制度の見直しについて考えてみることにしたい。具体的には、主に地域福祉基金制度を事例に取り上げ3)、市民セクター支援の基盤整備のなかでもとりわけ重要になっている財政支援について新たな試みの方向性を探ってみることにする。その理由のひとつは、各種の実態調査から明らかなとおり、そもそも市民セクターと行政の連携がもっとも深い分野が財政支援のそれでありかつ双方に諸々の経験が蓄積されていること、また市民セクターからはこれまで以上に財政支援を求める声が強いことからである5)。いまひとつは、直接の窓口となってきた地方自治体にとっても、市民セクターに対する支援の中心が補助金等の支出という形での財政支援にあったという従来からの経過がある。とりわけ、社会福祉協議会(以下、社協)等への直接の財政補助を除けば、それへの支援は地域福祉基金の果実運用方式に依るところが大きいことが知られているからである。

したがって、本章では、まずはじめに市民セクターの支援に果たす地域福祉基金の現状

 

 

 

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