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してない。市民活動と行政の関係を論じるためには、この点を重要なポイントとして押さえておきたい。

 

(2) 地方自治体にとっての市民活動
市民活動と一口でいっても、その活動範囲、活動領域、団体の規模等々、実に多様である。とくに活動の場としては、国際的なNGO活動のように、世界的な広がりをもっているものから、地域コミュニティの中で活動するものまで多様である。本章では、市民活動と地方自治体の関係のなかで、とくに地方行政が市民活動との関係において果たす役割について論じるわけであるが、それは、以下の理由による。すなわち、地方自治体は地域住民にとってもっとも身近な政府であり、市民活動の多くが進出している領域の具体的な事務を担っていること、また、住民に身近な政府であるが故に、市民活動が提起する意見や政策を反映する機会が多いことがある。また、現実的にも、地方自治体が市民活動との接点を多くもっており、地方政治における政治過程に市民活動が重要なアクターとして登場していることがあげられよう、
一方、市民活動が活動している分野の多くが、地方自治体の行ってきた公共サービスと重なる部分が多いのも事実である。そればかりではなく、地域を基盤として活動する市民活動についての把握と協働がより具体的に可能なのは、地方自治体以外には考えられないと言っても過言ではない。それゆえに、市民活動と行政の関係について検討するに際して、地方自治体と市民活動の関係を議論することが重要なのである。
そうした必要性が生じているにも関わらず、地方自治体の市民活動に対する認知と取り組みはなかなか行われてこなかった、地方自治体という政府にとっては、市民活動は公害反対運動に象徴されるような「やっかいな」ものであり、伝統的に自治体と協力関係にあった町内会組織のような下請け機関があれば十分だったのである。
しかし、都市型社会の進展と従来のコミュニティの崩壊、町内会の組織率低下や「新しい社会運動」の登場として語られるような市民運動の変化は行政の姿勢にも変化を生じさせた一なにより、阪神・淡路大震災におけるボランティアのめざましい活躍は、中央政府をしてNPO法制定の方向を余儀なくさせることとなった。また、地方自治体にも、より具体的な対応を迫らせることとなったのである。

 

 

 

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