日本財団 図書館


 

第2章 自治体による市民セクター支援政策の現状と課題

 

牛山久仁彦

 

1. はじめに

阪神・淡路大震災や日本海重油流出事故の際に、ボランティアが果たした役割は大きい。従来、そうした役割は第一義的に行政が担うべきものと理解されてきたが、そうした理解は過去のものとなりつつある。今日では、福祉や医療、教育・文化などの公共サービスが、広範囲にわたって市民セクターの下で展開され、公共的役割を行政と分かち合っているといっても過言ではない。地方自治体は、住民に身近なサービスを提供する政府として、市民セクターの担い手としての市民活動と協働を迫られることとなるが、それへの対応は、必ずしも十分ではない。本章では、地方自治体が市民セクターの担い手としての市民活動に対してどのような支援方策を行っているのか、また、その現状は満足のいくものなのか、今後どのような制度を展望するのかを検討したものである。その際、自治体の行う市民活動への資金的援助、人的援助、惰報提供、活動場所の提供などをふまえ、行政機構整備を視野に入れる一方で、市民活動の自立性をどのように担保するのかという視点も重要視したい。

 

2. 問題の所在

(1) 市民活動の新しい展開と行政
阪神・淡路大震災を契機として、市民活動が注目を集めるようになってきたとしばしばいわれるが、市民活動の社会的役割は、すでに1970年代から重要な意義をもってきていた。とりわけ、1980年代以降に表面化してきた、市民一人一人が個人を基礎に主体的に参加して団体を形成した市民活動は、公共性・公益性の追求という面でも行政が無視できない存在に成長してきている。
1970年代に、市民運動として登場した平和運動、公害反対運動、人権擁護運動なども、こうした市民の活動の端緒であっといえ、それらが果たしてきた公共的役割やそれが提示

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION