
などがある17)。すでに紹介した研究も含めてこれらの研究を概括していえることは、第1に、非営利セクターであれ市民セクターであれボランタリー・セクターであれ、必ずしもその概念を明確にしたうえで、論じていないということである。したがって、各国比較を実施する際にはおのずと限界がある。第2に、欧米先進国では、日本に比べてこれらのセクターの独立性が高く、その役割が相応に認知されている歴史が深いため、行政との関係を論じるばあいでも、その位置づけがほぼ対等であるということである。日本においては、行政による援助が議論の中心になりがちである。第3に、これらのセクターの組織化の度合いが高いため、すでにその内部管理等をはじめマネジメントのあり方にまで研究が拡大している点である。これらの点を念頭に、つぎに日本における研究動向を簡単にながめて置こう。 3. 日本における研究動向
欧米における重厚かつ多彩な市民セクター研究に比べると、日本における研究はたしかに乏しいかもしれないが、阪神・淡路大震災以前にもかなりの研究が行われている。先に紹介したT、レヴィットのサード・セクター論にかんする紹介は社会学者によるものであったが、政治学および行政学の分野にかぎってみても、市民参加の一形態としてのボランティアと自治体のあり方にかんする研究18)、いわゆる伝統的な「公私二分論」では取り上げられることのない「共」の役割の拡大を前提とした、その機能等にかんする研究19)、などがある。また、自治体学会においても毎年のように市民セクターにかんする分科会が設定されており、自治体レベルでの関心の高さを伺うことができる。 本節では、ここ数年多数刊行されている報告書を中心に、日本における最新の研究動向を紹介したい。冒頭のべたように、その後の研究の多くに引用される研究成果が総合研究開発機構(NIRA)の『市民公益活動基盤整備に関する調査研究』(1994年)である、この研究は、(社)奈良まちづくりセンターが受託して実施したもので、?@日本社会における市民公益活動の意義と歴史的背景と制度の現状、?A市民活動の広がりとその分野、?B市民公益活動の実態と課題、?C海外における市民公益活動の現状、?D日本における市民公益活動促進の政策的課題によって構成されており、内容はきわめて充実している。 以下、報告書のポイントをしめすことにする。第1に、この研究の意義は「市民公益活動」にかんする概念整理を行ったことである(図2参照)。
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