
はじめに
−本報告書の概要− 武藤博己 1995(平成7)年における阪神・淡路大震災を1つの契機として、市民活動の存在がクローズアップされ、その活動に対する期待・評価も急速に高まってきている。もとより、震災以前から市民のボランティア活動は全国的に活発になってきており、まちづくり、福祉、教育、環境保護、国際協力等の分野で多彩な活動を行っている。今後も高齢化、国際化の進展によるわが国の社会環境の変化に対応する主体として、その活動はますます期待されよう。さらに、いわゆる「市民活動促進法案」(通称:「NPO法案」)は、市民活動組織のとらえ方、行政による援助のあり方をはじめとして多くの議論を生みだすことになった。 このようににわかに関心が高まってきている市民活動については、様々な政策分野で政策主体の一端を担うまでに認知されながら、その活動の自立性を保障する制度や支援する方策があまりにも不十分であるという指摘が多方面からなされている。これは、先に述べたNPO法案が活動の支援を目的の1つとしていることからも明らかであろう。また、そもそも市民活動の実態についても必ずしも明らかになっておらず、その把握方法も模索されている。さらに、ここ数年に限ってみても、総合研究開発機構(NIRA)の複数の報告書(『市民公益活動基盤整備に関する調査研究』1994年、『ボランティア等の支援方策に関する総合的研究』1996年、『市民公益活動の促進に関する法と制度のあり方』1996年)、東京都の報告書(『行政と民間非営利団体』1996年)等が公刊されており、市民活動の制度的整備にかんする模索が行われている。 本調査研究は、このような市民活動に対する関心の高まりを社会的背景として出発している。市民活動にかんする論点は多数あるなかで、ここでは行政との連携に焦点を合わせている。海外の事例研究の成果を吸収しつつ、市民活動の自発性、自由を損なわないことを前提とした協働関係のあり方を検討する際の論点を提示することが本調査研究の目的である。ところで本調査研究においては、その名称に現れているように、「市民セクター」という概念を使用している。ここでは、この概念を明確に定義しているわけではなく、市民活動なりボランティア活動といわれる活動の多様な主体をしめす総称として使用してお
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