第10章 北海道東北開発公庫の研究
−政府系金融機関と地方分権との関係を考える− 横山純一 1.はじめに 北海道東北開発公庫は、国の行政改革との関連のなかで、現在、その存廃・合理化が話題となっている。また、とくに北海道地域においては、官依存の経済体質から脱却して地域経済の自立をはかるべきだという北海道経済自立論が−その主張の中味には従前のそれと比べてみてもなんら目新しいものは存在しないけれども−地方分権の流れがすすむなかで勢いをえてきている。そして、このような経済自立論との関連においても、北海道東北開発公庫がしばしば論ぜられている。 「北海道東北開発公庫は、北海道及び東北地方における産業の振興開発を促進し、国民経済の発展に寄与するため、長期の資金を提供すること等により、民間の投資及び一般の金融機関が行う金融を補完し、又は奨励することを目的とする」(『北海道東北開発公庫法第1条』)ものとして、1957(昭和32)年に発足した。そして、現在、北海道東北開発公庫は、北海道・東北(東北6県および新潟県)地域において産業の振興開発に必要な事業を営む企業や第三セクター等に対して、設備資金および長期運転資金の出資、融資、債務保証や、地域産業などに関する各種情報の提供、地域開発プロジェクトの起業化支援等を行っている。 北海道東北開発公庫をめぐる論議に関しては、北海道東北開発公庫が北海道・東北地域の経済に果たしてきた役割を歴史的にきちんと検討するとともに、北海道東北開発公庫自身が時代の変化に機敏に対応した自己改革努力を行い、時代のニーズにあった業務や仕事を行ってきているのかを考察することが、まず必要なのではないだろうか。このような検証がほとんどなされないままに政治的にその存廃が決してしまうのならば、北海道地域や東北地域にとってこれほど不幸なことはないであろう。北海道東北開発公庫を、政府系の金融機関であるから中央集権的であるとただちに決めつけることはできないし、ましてや非効率な存在だと断定することはできない。また、政府系の金融機関に依存してきたがゆ
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