第6章 地方分権と市民決定システム
−自治体内部の分権化と市民参加の展開に向けて− 大石田久宗 1.はじめに 地方分権の具体化が期待される大きな変革の時代である。議論の中心は、国、都道府県と市町村の間の権限の委譲、機関委任事務の原則廃止、誘導的補助金の廃止などである。 しかし、自治体で働く者として、まず最初に議論されるべきは、市民サービスの最前線である自治体の内部の分権化の問題であり、市民参加や自治体内部の自治の制度化であると考えているが、現実にはその内容が深められる様子が見えない。そこで、自治体の意思決定システムとして市民参加の現状につき考察し、あわせて自治体内部の自治システムと市民参加の関係について考えることが、本論文の目的である。 始めに、地域で活動する町内会・自治会や、新しい「しかけ」としてのコミュニティ単位の住民組織と行政との関係を、市民参加のシステムとして位置づけることの可能性について考察する。自治体によって差異はあるものの、これらの団体の意向を住民組織の基礎として制度化することが、必要ではないだろうか。 つぎに、都市計画や生活保護制度など自治体の権限が、地方分権によって大きく拡大することを前提に、政策課題整理の体系として自治体の計画づくりを位置づけ、さまざまな工夫とその問題点を明らかにしたい。その上で、自治体の計画づくりの第2段階ともいえる「実践しながら作りあげるワークショップ」によるまちづくりの可能性についても考えたい。 また、アメリカの委員会制度、公聴会制度やドイツの地区委員会などの制度から、新しい日本型の参加のシステムについて検討を加え、その長所と短所について考えるとともに、現状の町内会・自治会・住民組織を市民参加のシステムに転換していくための問題点を整理する。 最後に、市民参加に係わる「運動型」、「サークル型」、「行政との協働型」などのさまざまな市民活動が、現在、行政とどのような関係にあり、今後どのようにそれが展開し変化してくるのかを考察し、自治体の制度改革の方向性について問題提起を行い、地方自治
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