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第4章 地方分権の進展に伴う自治体の組織と施策

真山達志

 

1. はじめに

 

地方分権が叫ばれて久しいが、その中で自治体は地方分権をどのように受け止め、具体的にはどのように地方分権に取り組んできたのだろうか。また、1980年代以降、地方分権と並んで強調された地方行革との関係では、自治体はどのような影響を受けているのであろうか。さまざまな批判もあるが、自治体は激動の時代にまったく旧態依然のまま環境変動に対応していないとも思えない。いろいろな形で変化をしているはずである、本稿は、このような疑問に答えることを最終的な目標としている。もっとも、1980年代以降の自治体におけるすべての変化、変容を網羅的に把握することは不可能に近いので、ここでの関心は、主として自治体の組織規模と施策に焦点を合わせることにする。いわゆる自治体の規模に関わる問題である。
ところで、昨今、地方分権推進委員会においても、また地方制度調査会においても、地方分権の受け皿論とのかかわりの中で自治体の規模の問題が論じられつつある。そこでの論議は、広域行政や市町村合併などの広域化手法を活用した自治体の行財政能力、政策能力の確保にかかわるものが中心である。したがって、地方分権時代の理想的な基礎自治体の物理的な規模はどのくらいなのか、そしてその理想的な規模を実現するとしたらどのような制度や手法が必要なのかが検討されていくであろう。しかし、本稿の関心は理想的な規模をどうするかということではなく、地方行政改革や地方分権という激動の中で、現に存在する自治体が環境変動にどのように対処してきたかを明らかにすることである。そしてそのために、1980年代以降の自治体における変化を的確に把握できるモデルを作ることを目指している。
自治体の規模が論じられる際に、ともすると人口、面積、財政、組織、職員数などが指標として考えられる。たしかに数値化され、統一的かつ容易に把握できる指標であるが、はたして自治体の規模を従来のような統計データをもとに把握していていいのだろうかという疑問がわく。ほんの少し考えてみれば明らかなように、大規模な都市自治体がきめ細

 

 

 

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