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2.3.5 都市圏の交通課題

 

(1)都市圏レベル
ケープタウン都市圏の郊外への拡大に伴い通勤トリップの長大化が加速されてきており、モータリゼーションの進展とも相まって自動車交通の効率低下が著しい事は前記の通りである。現在自動車の保有率は140台/1000人の水準にあり、ヨーロッパ先進各国のほぼ半分であるが、発展途上国と比べるとはるかに高いものとなっている。今後の自動車保有の動向であるが、道路インフラとして自動車専用道路等が良く整備されている状況、郊外居住が一般的な都市圏の土地利用から見て自動車利用の優位性、必要性が高く、保有への欲求は衰える事はないものと想像される。しかし保有コストが輸入関税の面から比較的高いレベルにあるため、所得階層別の保有/非保有の違いが更に明瞭となり、交通問題が社会問題化する恐れも考慮しておく必要がある。
また自動車交通のみに依存した交通のあり方については、道路投資効率の低下やエネルギー、公害問題への関心の高まり等を背景として、行政レベルからも反省の声があり。より効率的・合理的な輸送体系の確立が必要との見方から、都市圏における土地利用計画の再検討や公共交通体系の活用等を目指す動きが出ている。
我々もこの方針については同意見であり、これからの都市圏交通体系は公共交通機関の一層の拡大が条件であり、そのためには現行の公共交通システムが有する不便さや安全面の問題等を解決していく事が必要と考える。まず目を向けるべきは現在の公共交通システムのネットワークについてである。公共交通手段は基本的に駅やバスストップを起点とした線的な交通システムであり、利用者はトリップを完結するためには複数の乗り継ぎやアクセスを必要とし、ラインホールのみが整備された状態では不十分である。すなわち利用者の視点から公共交通機関相互を連携した体系化が必要であり、現在各交通手段が持つネットワークの広がりや交通機能を点検し、得意とする輸送領域に特化し役割分担を図っていく事が望まれる。
このような公共交通についての総合調整機能は誰が行うべきか等については専ら南ア国の事項であり我々が関与すべき点ではないが、提言として以下に触れておきたい。

 

 

 

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