
第1章 序論
1.1 調査の背景と目的
南アフリカ共和国はアフリカ大陸の最南端に位置し、豊かな自然と天然資源に恵まれた国であると同時に、GNP、自動車の保有台数、電力消費量等あらゆる経済指標の数値がアフリカ大陸のトップを占める国である。
また、1991年以降、南アフリカ共和国は人種隔離政策、国連の経済封鎖という苦難の歴史を克服し、世界各国との積極的な交流・交易回復を軸に新たな経済発展を図ろうとしている。
今回調査対象となっているケープタウン市は、同国の共和国議会の開かれる立法府の首都でケープ州の州都である。同市の都市圏人口は310万人で、全人口の7.1%にあたり国内で最大の人口を有する都市圏である。都市圏の交通機関は、主として鉄道、バス、タクシー、自家用車が利用されているが、特に自家用車のシェアが50%強と高くなっている。その原因としては道路整備が公共交通機関の整備よりもかなり進んでいること、現状では道路混雑があまり激しくないこと、公共交通機関の車内での治安が悪いこと等が考えられる。
ケープタウン市は世界有数の美港と周辺に数多くの観光地を有していることに加え、2004年のオリンピック誘致を目指していることから、大規模な都市開発及び都市交通の整備を図ることを計画している。
ケープタウン市の都市交通の現状は前述のとおり道路交通に依存しており、ケープタウン市当局は近い将来、道路混雑と排気ガスによる都市環境の悪化を招くことを懸念し、LRTを中心とした軌道系公共交通機関の導入を検討している。
本調査は、ケープタウン市当局の協力により、(社)海外鉄道技術協力協会が(財)日本船舶振興会(日本財団)の補助を受け、ケープタウン市の公共交通機関の在り方とLRT導入の適否について予備調査を実施するものである。
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