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 アルゼンチンは、貧富の差の大きいラテンアメリカ諸国の中にあって、富の分配が最も平等になされている国である。そのため、幅ひろい中産階級が存在している。それは、農牧業の発展によって、国全体の生活水準が向上したことと、早くから工業が促進され、それに伴って労働者の組織化が進んだことなどによる。
 しかし、一方では、このような高い生活水準が社会の停滞をきたしており、この国最大の社会問題となっている。
 アルゼンチンの産業構造の特色は、農牧業が中心をなして、国家経済を支えていることである。
 国民総生産(GNP)比や就業人口比などからみれば、第2次大戦後、急速に発展した工業などには及ばないが、牛肉、小麦、とうもろこし、羊毛などの農畜産品の輸出額は、輸出総額の約90%を占めており、アルゼンチン経済は現在も将来も農牧業に依存する国といえる。
 アルゼンチンには、5,000万頭(1992年)の年および2,400万頭(同)が飼育され、牛の大部分と1,400万頭の羊は、パンパで放牧されている。
 1538年にスペイン人が本国から数頭の牛と羊をもたらし、1860年に英国種の優良種が移されて改良され、今日の盛大さになった。当初は皮革や肉を輸出していた。肉は塩漬けてあったが、1877年に冷凍船が建造されて以来、生肉は赤道を越えて欧州諸国へ輸出されるようになった。
 現在、世界市場で販売される牛肉の5分の2は、パンパ産のものであるといわれている。
 また、ミルク工業も発達し、南米の酪農地帯となっている。
 パンパの羊は、1895年の5,200頭を最高とし、牛の飼育にかえられ、人口の少ない、気候の悪いパタゴニア地方に移された。
 そのため、羊の飼育頭数(1992年2,400万頭)は半減しているが、パタゴニアは羊毛生産の中心地となっている。
 畜産物では、牛肉の生産が過半数を占め、牛乳、羊毛、豚肉、羊肉がこれに次いでいる。
 一方、農産物では小麦、とうもろこし、大豆、亜麻仁などが中心であるが、近年、野菜、果実、ひまわり、綿花、砂糖きびなどの生産も増加しており、農業の多角化が進んでいる。

 

 

 

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