(1)一般事情
クウェートは、国土の大部分が砂漠などの不毛の土地であり、厳しい気侯条件と水不足のため耕作に適した土地は、全国土面積17,818平方キロメートル(日本の岩手県をやや上回った程度の面積)の8.6%を占めているに過ぎない。
しかも、可耕地の87.1%は草地で占められ、野菜、穀物などの食料生産に利用されている土地は、全国土面積の1%にも達していないのが現状である。
主要作物は、トマト、玉ねぎなどの野菜類とメロン、デーツなどの果物があるが、国内需要の約20%を満たしているに過ぎず、農業部門の国内総生産(GDP)への寄与率(86年)は約O.1%と極めて低い。
クウェート政府は、農業振興の一環として、いくつかの実験農場を運営しており、農牧業の活性化を合め牧畜業の育成にも力を入れている。その結果、牛乳生産は80年の9,000トンに比べ、85年は約5万トンに増加し、92年までに11万トンに達するものと期待されている。
しかし、このような開発活動を行っているにもかかわらず、クウェートは食料の大部分を輸入に依存しており、食料品の輸入は輸入総額の16%(86年)を占めている。
いずれにせよ、クウェート農業は厳しい気侯条件(高温と降雨量不足)のもとで、土壌が悪く、水が不足し、労働力が希薄といった障害があり、農業開発を推進してもその発展には限界がある。
製造業については、その発展は国内市場の狭隘性が原因し、輸出向け石油関連工業を中心とした工業化が進められているが、一般製造業の発展は遅々としているのが現状である。
また、クウェート政府は、他の中東産油国が積極的に進めてきたような輸入代替工業化政策をとらなかったことも、クウェートの製造業の発展を妨げる一因となっている。