日本財団 図書館


とが分かる。このレーダーが図9・21のような高さ15mの空中線のものであるならば、同図よりA、Bとも高さ7m程度の物標であると考えられる。これに対してCの物標の8乗域への移行は20海里と遠いが、4乗域ではAと同じ反射波強度である。これは、AとCは同じレーダー断面積σを有する物標であるが、CはAに比して非常に背の高い、図9・21で見るならば高さが70 mもあるような物標であることが分かる。こうして、レーダーで探知できる物標の距離、最大探知距離は物標の大きさ(正確にはレーダー断面積)とともにその物標の高さが大きな影響を持つことが分かる。

9・9・3 海面からの反射波の特性

海面が比較的滑らかであればレーダー電波は図9・14に示すように遠方(前方)へ向けて反射又は散乱(forward scatter)をするだけである。海面が波立っているときは、いろいろな反射又は散乱成分になり、海面からの反射波がレーダーの方向に戻ってくるような反射又は散乱成分(back scatter)が生じ、それらはレーダー受信機で受信されて、指示器上に表示される。このような反射波は海面上にある浮標などの小さな物標の探知をマスクする妨害を生ずることになり、海面反射妨害(Sea Clutter)と呼ばれている。

[[イ霖?] 232-1.gif

 このような海面における後方散乱波は、入射波と海面とのなす角が小さくなると、鏡面反射的な成分が増加し、後方散乱成分が減少するので、海面反射妨害の効果はレーダーからの距離とともに他の物標から距雌の反射波よりも急速に減衰するという性質を持っている。図9・25はそれを定性的に示したもので、曲線A、B、Cは海面の状態によって海面反射妨害の大きさが異なる状況(A、B、Cの順に荒くなる)を示している。点線で示した曲線Dは浮標のような小物標で、曲線Bとの比較をみると、曲線DがBの上に出た部分では、レーダー受信機の利得を調整することによって、海面反射妨害に打ち勝って小物標の存在を探知することが可能で

 

 

 

前ページ    目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION