飛び出していく。温度が上がれば上がるほど加わるエネルギが増し、このような電子が増加する。もしこのような半導体の結晶に電圧が加えられると、結晶は電気を導き、温度が高いほどその伝導性は良くなる。
電子が飛び出した跡には、ぬけ穴(ホール)を生じているが、この穴の部分は、初め (−)の電荷を持った価電子があったときには電気的に中性であったので、そのホールは電気的に (+)とみられる状態にある。このためこのホールを正孔(せいこう)と呼ぶ。このホールに近くの結合部から飛び出した価電子が落ち込む場合もある。この場合にはそのホールは消滅するが他の部分にホールを生じるから、見かけ上、ホールが初めの位置から新しいホールの位置まで移動したことになる。結晶に電界が加えられている場合には、電子は電界とは逆方向に移動するから、ホールは電子とは逆に電界の方向へ移動することになる。(+)の電荷を持ったホールが移動するのであるから、これに伴い電流も生じることになり、これを正孔電流と呼んでいる。
4・1・4 N型半導体とP型半導体
Ge結晶を作るときに、不純物として価電子を5個もった物質、例えば 砒素Asを添加するとGe原子の来るべき位置にAsの原子が図4・4のように入り込む。このとき5個の価電子のうち4個は周囲のGe原子と共有されるが、残る1個の電子には共有される相手がない。このような電子は、外部からの熱や光などのエネルギの刺激により、容易にAsから離れて結晶中に飛び出していき、この電子が電気伝導を生じる自由電子となる。すなわちごくわずかのAsを加えることによって電流が流れやすい状態になる。このような結