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A編 GMDSSの概要

1.はじめに

IMO(International Maritime Organizatiom:国際海事機関)の昭和54年(1979)の第11回総会では、海上遭難安全通信の現状を考察し、遭難と安全、無線通信、運用手順を改良するために、捜索救助組織と連繋して、最近の技術的進歩を取入れて、海上の人命の安全を明白に改良するような新しい全世界的な海上遭難安全システムを確立することを決議した。そして約10年の審議を経て昭和63年(1988)11月に、国際会議を開催し、新しい全世界的な海上遭難安全システムとしてGMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)を実施するため、海上人命安全条約(the International Convention for the Safety of Life at Sea:SOLAS条約)の第?章「無線通信」の大改正を、並びに第?章「救命設備」及び第V章「航行の安全」の関連事項の小改正を行った。このGMDSSは、“SOSがなくなる”と伝えられているように、従来は主としてモールス符号による中波無線電信と、これを聴守する人間の耳に頼っていた遭難・安全通信に、衛星通信技術、マイクロ波技術、ディジタル技術・コンピュータ技術・小型電子回路技術などの最近のエレクトロニクス技術を全面的に採用して、自動化通信とした新しい海上の遭難・安全のための“通信”システムである。この新しいシステムのためのSOLAS条約の採択に先立って、昭和51年(1976)インマルサット(INMARSAT)条約が採択され、船舶通信に人工衛星を利用する道を開き、これは昭和54年(1979)に発効した。また昭和52年(1977)世界航行警報業務がIMO総会で採択され、世界の海洋を16の区域に分け、夫々に航行警報に関する調整国を定めて沿岸各国より提供される航行警報を調整して放送するようにしたナバリア(NAVAREA)海域の設置(図1参照)が制定された。
昭和54年(1979)には、いわゆるSAR条約、海上における捜索及び救助に関する国際条約が採択され、昭和60年(1985)に発効した。この条約は海上における遭難者を迅速かつ効果的に救助するために、沿岸国が自国周辺の定められた水域についての捜索救助の責任を分担し、適切な捜索救助を行うよう国内体制を確立するとともに、関係各国で海難救助活動の調整等の協力を行うことを定めており、全世界的な捜索救助体制を目指している。GMDSSの完成は10数年にわたるIMOと国際電気通信連合(ITU)の関連各委員会などでの審議の結果、前述の昭和63年(1988)11月IMOにおけるSOLAS条約改正会議で採択されるに至ったものでもあり、その導入は平成4年(1992)2月1日から始められ、各種の経過措置を経て、平成11年(1999)2月1日よりは全面的に新システムに移行することになっている。

 

 

 

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