日本財団 図書館


 

全球の波高偏差(計算値)と太平洋赤道域の海面水温偏差との相関解析を行った結果、エルニーニョ監視区域Cの水温偏差と北太平洋中緯度の波高偏差が正の相関、同水温偏差とインド洋の波高偏差が負の相関を示した。この現象の気象学的説明は今後の課題である。
循環指数と日本沿岸の波高偏差(観測値)との間には、季節別では(特に冬季に)相関関係が成り立つ地点があることが明らかになった。これらの沿岸では循環指数を波浪の長期予測パラメータとして使用することが可能性である。
循環指数とそれぞれの循環指数を定義した領域の波高偏差には、一般に負の相関があることが確かめられた。これは全球の波候変動が偏西風波動あるいは極渦の強弱に依存することを示すものである。
循環指数NH−ZI,R2−ZI,EAST SEAおよびOGASAWARAは、冬季に太平洋低緯度(北緯3〜18度、東経120〜170度)の波高偏差と正の高い相関を示すが、その気象学的解釈は今後の課題である。
最後に、本研究で得られた関係式を用いた波浪の長期予測の可能性に関して考察を行った。気象の1ヶ月〜季節予報資料とこれらの関係式から、波浪の長期予報は可能であると考えらる。

5.2 今後の課題

大気大循環と月平均波高との間に、多くの統計的関係が成り立つことが明らかにされた。これらの統計的関係からは、波浪を発達させる地上の気象擾乱と大気大循環がどのように結びいているかは明白ではない。今後はこれらを物理的に説明をすることが必要である
得られた波浪の統計量(昨年度報告書参照)および大気との統計的関係式は、このまま波浪の長期予報へ利用することができる。これらを計算機に組み込み、波浪の客観的長期予報へ結びつけることが肝要であり、今後はこの実用化試験が望まれる。
熱帯の大気海洋の状態が天候に及ぼす影響について、多くの知見が得られている。今後はエルニーニョ現象時の波浪への影響を把握することが肝要であろう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION