
第5章 まとめ* 5.1 研究の成果 ―波浪特性の解析― 日本沿岸、日本周辺および北アメリカ周辺の外洋の波浪の統計的特性を明らかにした。これによると、波浪は日本太平洋沿岸では6ヵ月周期の変動を示し、外洋および日本海沿岸では12ヵ月周期で変化する。 波形勾配は、沿岸波浪ではほぼ0.05を上限とする分布であるが、外洋波浪ではこれより大きく、かつ波高は沿岸波浪に較べて高い。 50年再現期待値は、日本沿岸の日本海側は7〜11mであり、海域毎の差異は小さい。太平洋側では6〜13mであり海域毎に差がある。特に中部日本から九州・南西諸島において大きい傾向を示す。 日本沿岸の波高の長期変化傾向は、太平洋沿岸のほとんどの観測点で増加傾向を示し、平均的に0.6cm/yearである。 ―大気大循環と波侯― 平年と著しく異なる気象は、大気大循環と関係することが知られている。波浪に関しても同様に、非平年時の波浪は異常気象によりもたらされることが推測される。本研究では波浪統計値(波侯)の変動特性を把握し、これが気象要因によることを統計的に明らかにした。 気象のパラメータとして、500hPa高度、循環指数、赤道海面水温を取り上げ、これらと波高偏差との関係を統計的に調べた。この結果、各観測点の波高偏差は、特定の領域の500hPa高度偏差と高い相関を示すことが明らかになった。これは気象学的には、上層のプラネタリー波が発達する年に地上の気象擾乱が活発化し、これにより波高偏差が平年より大きくなるものと考えられる。 500hPa高度偏差と赤道域海面水温との相関解析から、エルニーニョ時には南アメリカ大陸西岸において、気圧の負の偏差が起きていることが示され、エルニーニョと南方振動が密接に関係することが確認された。 *)執筆者 岡田弘三 前ページ 目次へ 次ページ
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