日本財団 図書館


 

4.4 赤道域海面水温と月平均波高

太平洋赤道域の海面水温は、2〜5年周期で上昇・下降変動をすることが知られている。赤道東部で海面水温が例年より上昇する事象をエルニーニョ、逆に下降する事象をラニーニャと呼んでいる。一般に、エルニーニョ時には世界各地で例年と異なる天候が現れる。これは太平洋赤道域の大気の循環(Walker循環)がエルニーニョ時には、例年と異なって、これに伴う気圧変動が遠隔地に波動として伝播するからであると考えられている。
ここでは、エルニーニョと500hPa高度および月平均波高偏差との関係を調べ、波浪の長期予測手法の可能性を検討をする。
―500hPa高度偏差と赤道海面水温―
赤道西部海域(D)の海面水温と500hPa高度偏差との相関分布によると、冬季では南アメリカ西岸の気圧偏差と正の高相関を示す(巻末資料10)。これはエルニーニョ時(D海域で水温が下がる)に南アメリカ西岸において気圧の負偏差が起こることを示し、南方振動(southern oscilation)とエルニーニョが密接に結びついていることを現している。
赤道中央(A)、赤道東部(B)、ペルー北部沖(C)の海面水温は類似した変動を示す。これらのうち、(A)海域水温と500hPa高度偏差とが最も高い相関を示す。これはA〜C海域の海面水温が上昇すると、北緯0度〜5度、東経95度〜120度(ボルネオ島付近)の気圧が例年より上昇することを意味する。これは大気の循環(Walker循環)が、例年では太平洋赤道西部において上昇流(対流が活発で低圧部)になり、その東および西側は相対的に下降流(高圧部)になるのに対して、エルニーニョ時には対流の活発な海域が東に移動し、このため、赤道域西部は例年に比較して高い気圧になることを示すものと考えられる。また、この相関分布図は遠隔結合(テレコネクション)を立証しているものと考えられる。
(A)、(B)、(C)の図から、赤道域の大気は赤道方向に沿って相関が高く、緯度方向では相関が無いことが示される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION