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第1章 総論*

1.1 研究開発の背景と目的

近年、社会活動に影響を与える年々の変動が著しい気象が現れている。例えば1993年の夏、東北地方は異常な低温にみまわれ、農作物は大きな被害を受けた。翌年の1994年夏は前年と打って変わって全国的に猛暑となり、西日本では異常渇水にみまわれた。海上気象に関しては、1993年夏は東北地方太平洋沿岸では例年と比較して高い波高が継続し、港湾の施工計画に影響を及ぼした。このような平年から偏った気象海象を予測することができれば、防災あるいは施工工程管理の上で事前に対処の方法を検討することができる。現状では、物理モデルに基づいた長期予報は1ヵ月予報が始まったばかりであり、より長期間(数カ月〜1年)の予報は実用的に精度は小さい。
ここでは波浪の長期予測の可能性を検討する目的で、波浪の長期変動特性について調べる。波浪の長期統計特性(波候)については、船舶、沿岸・ブイ波浪観測資料あるいは波浪計算資料を用いて、船舶設計及び港湾設計等の工学的目的から調べられているが、波浪統計値の変動性に関しては十分な調査研究がなされていないのが現状である。気候の変動および地球環境の将来予測が大きな課題になっている現在、波浪統計値(波候)の変動特性の把握が早急にされるべきものである。
本研究では、運輸省港湾局、気象庁およびアメリカ海洋大気庁において、現在まで蓄積されてきた波浪観測資料と昨年度事業で作成した波浪計算資料に基づき、北太平洋および全球の波浪の時間的変動を解析し、大気循環・エルニーニョ現象等との関連について考察する。
これらの成果は、高度情報化する将来において、海難防止および港湾整備計画のために重要な情報を与えると同時に、地球温暖化に関連した海洋土木活動のあり方を検討する上で、重要な基礎知識をもたらすものと期待される。
*)執筆者 岡田弘三

 

 

 

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