(4)その他の「ピストン・シリンダライナ摺動部の状態把握分析」技術
機関分析システムの開発状況から、ピストン・シリンダライナ摺動部の状態を把握分析する技術には前記の他に下記のような方法がある。しかしながら汎用性の観点から機関分析システムヘの導入にはさらなる研究開発を必要とすると思われる。
?薄層放射化法の利用
シリンダライナ、ピストンリング等の各種の部品を放射化し、放射化された部品自体の放射線量または摩耗粒子の放射線量をオンライン計測し、摩耗量を定量的および定性的に把握するものである。
精度が他の方法より優れている。しかし、日本では放射線に対する法規制が厳しく管理区域外(放射線に対する保護設備、管理方法等の規制がある)で自由に使用できない問題があるため、実船では利用は難しいと思われる。
?部品を252Cfを中性子源にて放射化し、マンガン濃度を測定する方法
シリンダライナ、ピストンリング摩耗粒子中のマンガン濃度を測定するものである。陸上の計測可能な施設が限られること、計測後の潤滑油等の廃棄物処理が問題となること等で研究室での計測方法である。
?シリンダライナ摩耗センサ(Semi Circular Steel Wedge)により測定する方法
特殊センサをシリンダライナに埋め込む方法である。
シリンダライナを加工することができる2サイクル大型機関向けであり、内航船向けには実用的でない面がある。また摩耗センサ自体が摩耗するため、その摩耗粒子の影響が懸念されている。
?シリンダ油の運転時のPH、全塩基化計測
シリンダライナにさん孔し、シリンダ油を直接サンプリングするシステムであるが、実験室での方法であり実船向きではない。
?電気抵抗計測
ピストンリングとシリンダライナ間の電気抵抗を計測し、ピストンリングとシリンダライナの油膜状況を判断するものである。動いているピストンからの引出し電線等が問題であり、実験室での計測技術である。
?マイクロフォン
機関室には種々の音があり、他の音との区別が難しく、まだ実験室レベルの研究である。
?ピストンリング間の圧力計測
シリンダを直接さん孔し、ピストンリング間の圧力を計測し摩耗を推定するものであるが、実験室でのシステムであり実船の適用は難しい。
?近接センサ(ギヤツプセンサ)
シリンダライナにセンサを取り付け、ピストンリングの合口隙間の計測よりピストンリングの摩耗、切損の異常を診断する。シリンダライナを加工することができる2サイクル大型機関向けであり内航船向けには実用的でない面がある。
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