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1. 薬が効くということ

(1)体が持つ自然治癒力の手助け

1. 異常な症状は体の防衛反応

病気を治すのは自分自身の抵抗力や自然治癒力である。たとえば、かぜをひくと体温が上昇するのは、そのほうが体に有利だからである。

感染症の原因になる微生物は、増殖するのに最適な温度の幅はあんがい狭くて、体温が上昇すると、微生物の増殖が妨げられ、また、体の中では微生物に対する抗体がそれだけ早く作られる。

熱があるからといって解熱剤をのむと、体の自然治癒力を妨げることになる。もっとも、40度以上の高熱がつづくと脳障害をきたし、死を招くことさえあるから、この場合にはまず熱をさげることが重要である。

2. 対症療法にも効果がある残念ながら、いまのところかぜを治す薬はなく、多くの薬はいずれもかぜの症状をおさえるものである。

たとえば、咳がひどいと夜も眠れずに体力を消耗させる。体力が衰えては、かぜをこじらせてしまう。咳止めは単に咳の発作をおさえるだけでなく、体力を回復し、自然治癒力のはたらきを促す。

こうした発作や症状をおさえる対症療法は、根本的な治療ではないが、体の自然治癒力を助ける効果がある。

(2)薬はどのように効くのか

1. 成分が血液に入り作用する

薬を口から飲むと、おもに小腸の上部で吸収されて血液に入って全身をめぐり、微生物にアタックして殺したり、細胞内に入り込んで作用したりする。薬が効くことを薬理作用といい、薬理作用は薬によってそれぞれ決まっている。そのメカニズムにはいろいろあって、薬によって違う。

2. 一病原菌を殺す抗生剤ペニシリンに代表される抗生物質は、肺炎や結核などに劇的な効果をあげるが、その効き方は薬の中でいちばん簡単で、病気を起こしている病原菌の発育を阻止したり、また病原菌を破壊したりして、病原菌を殺す。

3. 不足を補うビタミン剤やホルモン剤ビタミンは食物でとり、ホルモンは体の中でつくられるという違いはあるが、不足すれば体調を崩して病気につながる。そこで、ビタミン剤やホルモン剤の不足を補う。欠乏症の人にとっては不可欠な薬である。

4. 体の細胞に作用する薬現在使用されている薬のうち一番多いのが、体の細胞にあるレセプター(薬物受容体)という部分に結合するもので、結合して初めて薬理作用を発揮するものである。

このレセプターはおもに細胞の外膜上にあって、特定の化学構造を持つ薬と結合する。したがって、レセプターに結合しない化合物は薬としての効きめがない。

 

 

 

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