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第1編 『舶用工業の高度情報化システムに関する調査研究」事業の概要

策1章 事業の背景と目的

平成3年12月の海運造船合理化審議会答申「21世紀を展望したこれからの造船対策のあり方について」により、それまでの不況対策を柱とした政策から長期的な需給安定化、産業基盤の整備、国際協調の推進といった魅力ある産業を目指す中長期的な産業政策へと転換が図られた。
その後、我が国の造船・舶用工業の諸施策は、平成3年答申を基礎として実施されてきたが、為替の大幅な変動、韓国の建造設備拡張、米口の商船分野への参入による世界的な建造能力過剰の懸念、円高を契機とした欧州舶用メーカーの極東市場参入の動きの活発化などにより、造船・舶用工業をとりまく競争環境は大きく変化している。
更に、コンピュータ・情報技術の進歩に支えられた「情報革命」による情報ネットワークの普及や地球規模での環境保全も重要な課題となるなど、技術環境も大きく変化している。
このような状況下で、我が国の造船・舶用工業は、国際競争力の低下、設備投資の停滞による生産性の低下、技術開発活動の停滞、従業員の高齢化等の種々の問題に直面し、産業を取り巻く諸環境の変化に対応して的確な対策を講じる必要が生じている。
このため、海運造船合理化審議会において、事業環境の変化に対応して将来を展望した造船業及び舶用工業のあり方と今後の産業基盤整備の方策について検討がなされ、平成3年答申の補足意見書として「今後の造船業及び舶用工業のあり方について」(海造審第13号平成8年7月12日付け)がとりまとめられた。
補足意見書においては、我が国の舶用工業が、今後とも競争力を確保し、産業としての活力を保持していくためには、?経営資源の有効活用等による企業体力の強化、?コストダウンの追求、?高度な技術力の確保の3つの課題に取り組む必要があるとされている。
更に、これらの課題に対する具体的な対応として、(1)生産基盤の整備、(2)高度情報化の推進、(3)研究開発の推進、(4)国際化への対応の4つが指摘されている。
(2)高度情報化の推進については、「設計・生産・調達・保守等企業・産業活動全体の高度化・効率化を図るため、造船、海運等関連する産業とも協力しつつ、業務の高度情報化を積極的に進める必要がある。その際、情報処理の効率を高める方向で、業務・取引形態の合理化・最適化を進めるために業界間で取引条件等を明確化、定型化する必要がある」と記述されている。
このような指摘を受けて、造船業界をはじめとして関係各方面において情報化に向けた積極的な取り組みが開始され、造船・舶用工業全体の高度情報化のための基本構想(グランドデザイン)について検討するとともに、関係団体等の情報化に関する研究を全般的に把握し、効率的な推進を図るための調整を行うために、平成8年8月には、運輸省に「造船・舶用工業高度情報化推進委員会(委員長:小山健夫東京大学教授)」が設置された。
造船業においては、1O年程前からCIM、GPME等生産活動全般に亘る情報化に関する調査研究が進められており、導入、実用化に向けての体制は、概ね整備されていると言える。
他方、船舶に搭載される様々な機器を供給する舶用工業においても、今後、国内外の造船所、船主等において設計・生産工程、資機材の調達等での情報化が進めば、それに対する的確な対応が必要となると考えられる。しかし、舶用工業においては、コンピュータ等情報機器の導入の後

 

 

 

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