日本財団 図書館


 

秋田新幹線が3月22目開業
“北東北文化”との新たな出会い


東日本旅客鉄道(株)営業部長

江頭 誠



011-1.gif

1. はじめに

 3月22日、秋田新幹線が開業する。これにより、東京・秋田間は、3時間49分でダイレクトに結ばれる。これまでは、盛岡で東北新幹線から田沢湖線に乗り換えて4時間37分かかっていたが、48分短縮され、さらに乗換えがなくなることになる。山形新幹線の場合、平成4年7月の開業後、輸送量が1.5倍近く伸びたが、今回の秋田新幹線についても、十分な輸送量の増加が見込まれる。

2. 地域観光に求められるもの

 秋田新幹線は、従来の田沢湖線に新幹線車両が乗り入れる方式なので、田沢湖線沿線に広がる北東北地域の観光地全てが、秋田新幹線の開業による効果(時間短縮とダイレクトアクセス)を享受することとなる。しかし、これだけでは、「遠い北東北」のイメージからは脱却できない。
 北東北地域の観光は、他のエリアと比べて自然観光の割合が高いうえ、歴史と文化に育まれた観光素材が広域にわたって点在している。また、首都圏からの旅行を考えた場合、旅行費用の点では、決して有利な位置にはない。そのため、お客さまが観光地を効率よく回ることができ、かつ安く楽しめるような工夫が必要となる。
 このことから、開業効果を十分に発揮するためには、受け手である地元と、首都圏という巨大なマーケットを抱える送り手とが協力して、ハード・ソフトの両面を整備していくことが必要である。

3. 秋田キャンベーンの展開

 県と各商工団体、市町村では、秋田新幹線開業に合わせて、平成9年4月から「秋田花まるっデスティネーションキャンペーン」を展開する。その一環として、「秋田花まるっ倶楽部」の提案がある。これは、地元のスタッフ、コーディネーターによる体験講座で、なまはげ、竿灯、きりたんぽ等のイベントや、世界遺産「白神山地」や名水百選「六郷の清水」等を巡るといったものである。このような取り組みにより、地元ならではの観光素材が生きてくる。

4. イべント「あきた野遊び大学」の開催

 弊社では、開業記念として、6月13〜15日に「あきた野遊び大学」というイベントを開催する予定である。これは、秋田県内でカヌー、渓流釣り、ブナ林散策、牧場遊び、パラグライダー、寺体験などを体験し、セミナー、野外パーティーなどを組み合わせたイベントで、15の体験には体育学部、森林学部、鉱山学部など酒落た名称を付け、「大学」のイメージを醸しだしている。この種類のイベントは、既に、山形、福島、新潟、岩手、北海道、群馬等で開催し、いずれも好評を博している。

5. 「あたらしい旅」の提案

 また、弊社では、従来の観光旅行とは違った「あたらしい旅」を提案している。低廉な宿泊施設に長期滞在し、地元の料理、お祭り等に親しんだり、格安なレンタカー「トレン太くん」で自由気ままに周辺地域を探索したりして、もうひとつの自分のふるさとを見いだすというものである。低廉・清潔・簡素・安全な宿泊施設としては、3月22日には「フォルクロー口角館」が、4月21日には「ファミリーオ雫石」が、夏には「ファミリーオ田沢湖」がそれぞれ開業する予定で、秋田新幹線とあわせて、北東北地域への「あたらしい旅」のネットワークが充実される予定である。

6. おわりに

 このように、秋田新幹線の開業により、首都圏と北東北地域が連携しやすい環境が整うことで、旅を通じての文化交流が一層加速し、北東北の価値が高まる、そして経済効果が生まれ地元を潤す。このことが、地域観光に与えるもっとも大きな効果であると考えている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION