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TAP委員にインタビュー


個性ある観光地づくりを
国内観光にもグローバル化の波

遠藤 邦彦・東急観光(株)社長


 

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まず、TAPとの係わりからお聞かせください。

遠藤  私とTAPの付き合いは古いんですよ。平成2年の第3回目北海道会議に東急電鉄の横田社長の代理委員として出席させていただき、その後、確か1回欠席しているかも知れませんが、ほとんど参加しています。ただ、当初の参加資格は観光開発会社という立場です。

TAPに参加して感じられたことは何でしょうか

遠藤 TAPが始まった時期は、バブル華やかなりしころでした。その後、バブルが弾けて現在にいたる流れですが、その間、TAPの目的、役割も変わってきたと思います。最初のころのTAPの発想は右肩上がりの考え方でした。いわゆる大旅行時代というか、そういう方向でした。テンミリオン計画などもあり、旅行は海外に対する指向が強くなっていった。ところが、国内観光はどんどん空洞化が進んでいく状況となった。そこで国内観光を振興していかなければ、ということで始められたのがTAPの会議だったのです。

その成果はいかがだったでしょうか

遠藤 地方自治体にとって、観光はテーマとして扱いやすいのですが、全国すべてが観光立県に適合する条件をを持っているかと言えば、必ずしもそうではなく、やはり観光立県に向いている地域とそれほど優位性をもたない地域があり、選別して考える必要を、私は当初から感じておりました。ただ地方の取り組みを見てますと、割合各県とも同じような形で対応してきた感がなくはないと思います。しかし、国内観光の振興、地域振興に積極的に取り組まれてきた結果、一定の成果を納めていらっしゃる。とくに、TAPの役割で一番の効果は、広域観光です。これまで1地域で取り組んでいたものを、隣同士の県と横の連携をはかりながら、太いパイプを築き、今まで考えられなかった観光ルート等も議論されるようになりました。
 例えば四国の4県。これまで山が壁となり、それぞればらばらだったが、TAPによって壁が取り払われ、四国は一つにまとまった。最近では岐阜県と滋賀県。TAPを機会に接点を見いだそうという動きになってきました。また、観光産業はいろんな業種がありますが、25社の関連するトップが一同に会しますが、お互いコミニュケーションをはかり、認識を一つにまとめるという意味も非常に大きいです。さらに地元にとってもプラスの面が大きいし、旅行業にとっても、一つになり共同キャンペーンを展開するというメリットがありました。

全国の観光地を見て感じたことは何でしようか

遠藤 各地の観光に対するポイントのかけ方がそれぞれ違います。自然景観の美しさにポイントを置く姿勢のところ。あるいは人工的なものや、伝統工芸のようなものに特長を出した地域。ですから一概には言えないんですが、大事なことは地域の特性を生かし、どのように売るかが重要ではないかと思うんです。結論じみた話になりますが、日本の観光で今何が間題かと言われますと、私が感じたのは、結局、日本は個性があるのにアピールされていない。これでは日本の魅力が活かされません。やはり基本は街づくりです。日本の観光を考える上でも、一番遅れているのが個性ある街づくりと思うのです。21世紀には世界で5億人の観光流動があるといわれています。それが7億とか8億という時代になったとき、私は日本が取り残される危険性があると感じておりまして、そういう視点での地域づくりが必要と感じました。

ところで、これからの旅行についてはいかがですか

遠藤 旅というのは人間本来のものであり、どの時代になっても拡大しつづけるでしょう。需要もあると思う。ただ何を求めるかといえば、私はリゾートという旅の過ごし方。一つは骨休み型の短期滞在型。もう一つはある地域に滞在、そこを拠点に周辺を見ながら体験する長期滞在型。もう一つが従来型の、いわゆる各地の自然や歴史を訪ねる周遊型に分かれると思います。その中で、意外に骨休み型が主体になるざらをえないのではないか。これはお客さんが求めているもので、社会的経済的な環境がお客さんの二一ズをつくりあげるし、ライフスタイルもつくると思うのです。私の感じでは、旅行の二一ズは安いとか高いというのではなく、骨休みリゾートというのが一つのライフスタイルとして求められていくような気がしています。したがってそれに適した旅を提供しなければならない。お容さんが求めるようなものをつくるというのが私のやり方です。

最後にTAPのこれからのあり方についての意見を…

遠藤 考え方の視点はグローバルゼーションでなければならないと考えております。今や国内だけの閉鎖的な観光振興ではなく、もっとオープンマインドで日本人も海外へ行くが、海外からも訪れ、一緒に旅行をしようよという意識が必要なのではないか。TAPのスタンスもそういう視点を踏まえて取り組むべきと思います。

 

 

 

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