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5−2 ヒアリング調査の結果と評価
5−2−1 ヒアリング要約
【1】漁業全般の状況
・北海道の漁業を取り巻く状況はたいへん厳しい。漁獲量についていえば、例えば、日本海側のA漁業協同組合では、スケトウダラの水揚げはピーク時(昭和55年)には19,197tもあったものが平成5年には1,017トン、平成6年には695トンにまで減少している。このため、漁業者の経営状態は非常に悪化しており、結果として、経営的に新造漁船を取得しうる経営体は極めて限られたものとなっている現状にある。
・漁業就労者の高齢化も深刻で、例えば、太平洋側のB漁業協同組合の場合、組合員の平均年齢は約63才となっている。・高齢化と同時に漁業就業者の減少も深刻な問題として多くのヒアリング先で指摘された。例えば、B漁業協同組合の場合、組合員数は現在89名であるが、港湾工事に関連した漁業権補償問題が解決され組合員が補償金を得た段階で3分の1の組合員が脱退する可能性があるともいわれている。
・漁業就労者の高齢化・減少によって、将来的には諸作業の協業化が進展するものと予想されている。
・ただし、協業化することを契機に漁船を始めとする漁業関連の諸設備への投資が活発化するとは考えにくく、逆に設備投資は現状よりもさらに控えめになり、現有の設備状況で何とかやりくりしていく程度になるものと考えられるとする指摘が多かった。
・また、漁業就労者の高齢化・減少の結果、現在操業中の漁業種類の数も次第に絞られ、減少するのではないかと危倶されている。
・高齢化・人員減少に対応して作業省力化に役立つ諸設備を導入している例は多いが、諸設備の近代化や大型設備の導入は経営的な理由から多くの地域でほとんどなされていない現状にある。
・多くの地域が厳しい経営状態にある中、一方では、堅調な漁業経営を続けている地域もある。
・比較的好調な経営状態にある地域の共通点として、
対象とする海域を道南太平洋のコンブ漁場やオホーツク海沿岸のホタテガイ漁場にみられるように漁場を計画的に利用していること
近年の魚価低迷を意識して、人件費を始めとする操業コストを極力圧縮するため作業及び設備や機器の効率性を極めて重視していること
輸入水産物の増加や漁業資源の減少といった近年の北海道漁業を取り巻く環境を認識し、現在の好調を維持しつつも、好調なうちに今後の漁業経営のあり方を模索し、しかるべき投資を行うなど、将来的展望を明確に意識していること
などがあげられる。

 

 

 

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