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3 道内中小造船業の漁船建造への取り組み方策

3−1 漁船建造を取り巻く環境等
漁業資源水準の低下と漁場・資源の競合を背景として、その回復・調整のため、あらゆる漁業が資源管理型漁業の確立に向けて動き出している。資源管理には、TACに代表される漁獲量の管理という側面と、いわゆる沖合と沿岸との調整という側面、さらに、栽培漁業という側面があることが指摘できる。
例えば、北海道では昭和63年に「沿岸漁船漁業と沖合底びき網漁業との協調ある操業体制づくりのために」(指針素案)を策定し、資源と漁場に見合った協調体制の確立を目指している。造船業界との関連でいえば、沖合底びき網漁船の船型の小型化(124トン型漁船の取り扱い)が問題となる。
こうした資源管理の動きと魚種や漁業種類の変化を背景として、漁業部門は遠洋、沖合漁業が縮小し沿岸漁業のシェアが高まる傾向にある。これには、栽培漁業の果たす役割も大きい。
漁業種類は平成6年の漁業生産高(金額べース)では、?@さけ定置?A手ぐり第3種(ほたてけた)?B沖合底びき網?C採そう漁業?Dほたて貝養殖漁業がベスト5となっているが、さけ定置は前年に比較して欠損経営体か増加しており、また、沖合底びき網はほぼ3年連続で漁業粗利益率かマイナスになっているなど、厳しい状況が続いている。また、近年の魚価低迷も漁業経営を厳しくさせる一要因であり、その背景には、水産部の流通に関わるコストの問題や輸入水産物の増加があると考えられる。
漁業経営が厳しくなった結果として、漁業就業者数の減少・高齢化が生じ、これにより将来的には諸作業の協業化や漁業種類の減少すらも危倶され、漁船建造及び漁業関連諸設備への投資も減退することとなる。
主な漁業種類別の収益率をみると、ある程度明確な格差が生じており、また、北海道では海域ごとにそれぞれ漁業に特徴があることもあって、地域的な格差も生じている。これは、後述のヒアリング調査の結果からもうかがわれる。
漁船建造の状況をみれば、水産庁許可の長さ15m以上の漁船では、建造件数が徐々に減少してきており、中でも大型船の建造減少が著しい。漁業種類別の建造件数を道内外で比較すると、北海道内の造船所は「沖合底びき網」「混合」「定置」の各漁船に強みを持ち、逆に「小型機船底びき」には弱い。
今後とも新規建造は減少するとともに、将来的にも漁船漁業の共同経営化などにより漁船隻数は減少すると考えられる。漁船の建造と修繕に大きく依存してきた道内申小造船業界にとっては、当面、漁業経営が比較的良好な「手ぐり第3種(ほたて桁)漁業」における漁船建造、「こんぶ採そう漁業」に対応した雑海藻駆除船及び音や臭い、トイレなどの面で改善を図った釣り人に快適な「遊漁船」が期待できる程度である。

 

 

 

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