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2−7 作業船分野に進出するに当たっての克服すべき課題
前節の「作業船(特に起重機船)新造の道外流出原因」では、現在の道内作業船市場の在り方を、ある意味で厳しい視座から確認した。本章のまとめとして、これら現時点での問題点を今後乗り越え、道内造船所が作業船分野に積極的参入を図るために克服しなければならない課題を抽出し、次章の「今後とるべき経営方針」の検討材料とする。

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A 作業船市場に関する正しい現状認識
現時点において、作業船分野での競争力が本州造船業者に比べて劣位にある道内造船業においては、今後、作業船市場へ参入するに当たっては、経営外部環境を的確に把握し、それに対応する形で対策を講じるための経営計画・戦略の立案が第一に求められる。作業船の需要あるいは新造ニーズを事前察知するための公共工事の動向、あるいは海洋土木事業者の動向や中国船事情の把握等、従来以上に「経営の意思決定」という舵取りを行うために必要な情報は多様化・複雑化してきている。こうした多様な情報収集のために、常に感度を高めておく必要がある。そして、それら情報により、自社がどのような『経営戦略』をとらねばならないのかという、中長期的な展望やピジョンを持っての事業展開が強く望まれる。
またそれとともに、今後、自社が取り組むべき『ターゲット』としての作業船についてもある程度明確にし、それに見合った計画・戦略の立案を図ることが必要である。すなわち、総花的に『作業船市場』と認識するのではなく、ターゲットを絞り込み、それに向けての有効な『経営戦略』を実行し、そのターゲットでの実績の積み上げを自社の強みへと転化するような試みが必要であると考えられる。
B 生産能力(品質・原価・工期)の向上
海洋土木事業者各社からのヒアリング調査より、道内造船業者は漁船造りの豊富な経験と実績に基づき、丈夫な船を造る、あるいは丁寧な仕事をする等の、一定の非常に高い評価があることが分かった。しかし、作業船に求められるシビアなコストダウン、あるいはクレーンの配置、使い勝手などに関する設計思想に関しては、本州造船業者に劣っていると考えている業者が多く存在する。こうした作業船特有の使い勝手や操作性の向上といった、技術・品質的なレベル向上を実績の積み上げとともに図る必要がある。こうした生産能力を向上させ、海洋土木事業者のニーズを満たすための個社べース及び業界全体での取り組みが早急に求められる。

 

 

 

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