日本財団 図書館


 

2−6 海洋土木作業船新造の道外流出状況とその原因
先にも述べたが、修繕については道内造船所のシェアが一定規模確保されており、大規模な道外流出は現時点では懸念されないため、ここでは新造について検討する。
先の「海洋土木事業者の新造・修繕状況と今後の計画」の項でも指摘したように、北海道の作業船は「吊りもの」が主体であるという背景があるにもかかわらず、起重機船等の道内建造に関してはそのシェア低下が今後の動向として読みとることができる。特に、起重機船については、起重機の吊り能力が149トン以下のもので道外建造比率が59%、150〜199トン以下のもので同70%(前掲資料:「現有作業船一覧1993年版」より)と、吊り能力の大きい起重機船建造については、道外流出の傾向力顕著にみられる。また、ヒアリング調査でも、海洋土木事業者の起重機船発注性向に関しては、道外建造を考えているといった一定のスタンスを持っていることが分かった。
一方で、一般的な傾向として、台船や運搬船などのいわゆる「はしけ」に関しては、海洋土木事業者も道内での新造を特に懸念するものではないことと、回航費を負担してまでの道外発注は現実的ではないためもあり、道内造船所に発注するといった見解を抱いていることが確認できた。
以上のような状況を踏まえ、ここでは起重機船新造にかかる道外流出について、その背景と原因をヒアリング並びに地区別原価要因等からからまとめると以下のようになる。

084-1.gif

まず、背景としての要因として存在しているのは、前掲瀬戸内地域における関連事業者からのヒアリングからうかがえた、『地の利』の乏しさである。クレーンメーカーや搭載機器メーカーが集中する瀬戸内地域では、重層的な企業群として『産地』を形成し得ることが可能であった。しかし、北海道ではそうした恵まれた環境、いわば『地の利』に乏しく、スタート時点でのハンディを抱えていることを認めざるを得ない。また、漁船建造に特化した形で推移してきた道内中小造船所は、特性的に漁船と作業船の中間に位置すると考えられる内航船新造経験すら乏しいという事情がある。こうしたハンディを克服するに当たっては、北海道造船所の独自性の発揮が強く求められるであろう。
また、こうしたスタート時点のハンディを受け、これまで作業船分野に対する積極的な取り

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION