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2−4 作業船建造先進地(瀬戸内地域)事例
海洋土木事業者からのヒアリング等より、道内で稼働する作業船、特に起重機船等に関しては、瀬戸内地域の造船業者建造のものが多く流入していることが指摘された。そこで本節では、現時点において作業船新造を積極的に行っている瀬戸内地域の業者をモデル造船所とし、ヒアリングを行った結果をまとめる。また、作業船建造産地としての切り口から、あわせてクレーンメーカー等に関するヒアリングについても紹介する。
2−4−1 瀬戸内モデル造船所
現時点において、起重機船市場の状況としては、兵庫県内にある3造船所の全国シェアが6割以上を占めるという寡占状態にある模様である。これらの造船所は30年代のガット船の建造から作業船市場に参入したようであり、現在は作業船の中でも船舶検査対象外の非自航船をほとんど専門に作っている。
ヒアリングから受けた印象としては、作業船はいわゆる『船』ではないという認識で、極めて経済原理に基づいた建造思想を有していることが指摘できる。すなわち、台船部に関しては浮いていればよい。無駄な工数を省くという高いコスト意識、思想が徹底している。しかしながら一方で、搭載機器や配置の使い勝手、居住区廻りには最も使いやすい(利便性、デザイン、故障時または交換時の部品入手の容易性等)ものが追求されている。
ここでは、技術面。価格面・仕入面といった切り口で、これら瀬戸内モデル造船所からのヒアリング内容を紹介する。
技術面
・作業船は標準資料がなく、同型船がない。仕様が一船ごとにバラバラである。
・板厚については、長年の経験から薄くできる部分は薄くしている。
・設計・仕様の段階で顧客との納得いく打合せが重要である。
・作業船に関するある装置で特許を取得している。技術独自性は強みである。
作業船建造の難しさとしては、標準資料がなく、仕様が一船ごとにバラバラであることをあげ、北海道の造船所としては、これらをカバーするための実績の積み上げが最重要課題として指摘された。
また、主要部材の板厚に関しても、経験的に薄くできる部分は薄くしており、船価低減努力を行っていることが強調された。さらに、新造工事において最大の懸念は追加工事の発生であるとし、顧客との設計・仕様段階での納得いく打合せを強調する造船所もあった。
また、作業船に関する装置で特許を取得している点を自社の強みであるとする社もあり、技術独自性を持つことの重要性が感じられた。
価格面(コストダウン)
・作業船は1隻の利益率が低いため、船台を遊ばせないことが重要である。
・見積りを精密に行い、不要な価格折衝をしない。
・半自動溶接機等を導入し、作業効率を高めている。
・作業船は鋼材トン当たりの工数が少ないため、部材の仕入とロス低減が最重要である。
・作業船の船価の回復は今後期待できない。
価格面(コストダウン)に関するヒアリングでは厳しい指摘内容のものが多く、シビアなコストダウンの取り組み姿勢がうかがわれた。
まず根本的な姿勢として、作業船建造は1隻当たりの利益率が低いことから、船台を遊ばせないよう有効活用することを強調する業者があった。

 

 

 

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