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1−1−6 海洋土木工事の今後の動向と作業船市場に与える影響
本節では、海洋土木工事の内容とこれまでの動向について捉えてきた。ここまでのまとめとして、公共工事の今後の動向とそれが作業船市場に与える影響について考察する。

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A 海洋士木工事の事業規模横這化
各整備事業費の推移でみてきたように、国(北海道開発局)及び北海道が主管する港湾整備事業・漁港整備事業・沿岸漁場整備開発事業・海岸事業に関しては、これまで順調な伸びで推移してきたが、現状、事業費が微増もしくは横這いにて推移していることが分かった。今後については、各実施主体へのヒアリング調査等により、事業規模の大幅な増加は見込めず、横這い程度で推移するとのある程度一致した見通しが得られたとともに、特定の港湾等に対する重点的な予算配分がなされることも考えられる。
海洋土木工事の今後の事業規模という作業船需要に直結するファククーを考慮した場合、アゲインストとまではいかずとも、事業規模の拡大という追い風は期待できない状況である。このような工事の先行き不透明感の浸透により、今後の作業船需要はその伸びが鈍化することが予想される。
B 海洋工事の使用消波ブロック等の大型化、難工事化
港湾工事などにおいては、使用される消波ブロックの大型化等の進展が一つの動向として指摘できる。これは、波の荒い日本海海域あるいは沖合や海洋条件の悪い立地での工事に顕著にみられ、全道一律の大型化というものではないが、その動向は無視できない。今後の工事動向に関しては、海洋条件や立地条件等の地域性といった個別事情はありながらも、トレンドとして使用消波ブロック等の大型化が見込まれる。
また、今後の海域部工事は沖合や海洋条件の悪い立地など、既存の工事に比べると相対的難工事化が進展すると考えられる。例えば港湾工事においては、大水深パースや耐震強化岸壁などの建設が第9次港湾整備計画に盛り込まれている。こうした重量物運搬等の工事の出現により、大型作業船やその他作業船の需要か生じることが予測される。
また、従来は浚渫工事が少なく消波ブロック設置等の工事が中心であるため、「吊りもの」作業船主体といわれた道内でも、軟弱地盤工事の増加等に伴いサンドドレン船やサンドコンパクション船等の地盤改良船が必要となることが見込まれるている。
こうした動向をすべて道内海洋土木事業者が自社で作業船を保有することで対応するかの点については、設備投資額が大きいため投資採算ラインが厳しい等の見地から、その影響度についての疑問は残る。しかしながら、このような背景を受け、今後の作業船に関しては、「吊りもの」主体というトレンドを維持しながらも、今までとは異なる船種といったニーズの台頭も予見されることを確認しておく必要があるであろう。

 

 

 

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