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2−2−4 モデル造船所のケーススタディ
本調査研究では、上記『造船業の今後の経営方針』を受け、より具体的な検討を図る意味で道内造船業2社をモデル造船所として、ケーススタディを行っている。
A社は、近年作業船分野に本格参入し、急速な売上の拡大を図ってきた企業である。経営における特色として、シビアなコストダウンを実践している点、トップ渉外を中心とした機動性の高い営業を行っている点と、立地と社長の経歴による地縁・人脈等の恵まれた環境があげられる。手法的には、経営診断分析を主として行い、結果として、上記『造船業の今後の経営方針』中の、協業化・共同化の取り組み推進に対応した協力工場ネットワークの活用によるコストダウンを図る点と、さらなるステップアップのための財務体質面での経営基盤の強化を図る点についての提言を行っている。
B社は、技術志向型の修繕工事を中心とした造船業者であり、その高い技術力と提案能力を強みとして、独自性の極めて高い経営を行っている。今後の事業成長を図る上で、本ケーススタディでは、先の『造船業の今後の経営方針』中の石狩湾新港における作業船修繕能力の増強を考慮した上で、石狩湾新港における拠点形成を提言し、そのフィージビリティー・スタディを行っている。結果として、その実現可能性については、一部課題としての問題点は残るものの、大いに前向きな検討に値する事業計画である点を明らかにしている。
2−3 資源管理型漁業に対応する漁船等の開発
2−3−1 北海道水産業の現状と資源管理型漁業
昭和60年から平成6年までの間に、北海道の漁業生産量はほぼ半減、漁業生産額は約2割減少しているが、漁業部門別には遠洋、沖合漁業が縮小傾向にあり、反対に沿岸漁業のシェアが高まってきている。その背景には、経年的に魚種及び漁業種類か大きく変化していることがある。例えば、魚種別の生産量では、昭和50年代にはスケトウダラ、昭和60年代にはイワシか漁獲の中心であったが、近年ではホタテガイが最も大きなシェアを占めている。魚種・漁業種類別に大きく伸びたもの、逆に減少したものと、格差が生じており、そこには、沿岸漁獲量に占める栽培漁業が果たしてきた役割も大きい。
北海道の特徴として、日本海、太平洋、オホーツク海という3海面ごとにそれぞれ異なる漁業が営まれていることがあげられる。日本海地域では、比較的小さい規模の漁業経営体や漁協が多く、対象とする魚種・漁業種類が多様性に富んでいる。オホーツク海地域では、漁業経営体や漁協の規模が大きく、北海道の中でも最も安定した地城であり、ホタテガイの一大産地となっている。太平洋地域は襟裳岬を境に、その以東と以西で趣が異なる。以東地域では比較的経営規模が大きく、その沖合は、世界でも有数の漁場となっている。以西地域では、比較的経営規模が小さく、ほたてがい養殖漁業や採そう漁業(こんぶ)が盛んである。
主要魚種の資源水準は一部の魚種を除いて全般的に低位にあり、その増加・回復は極めて重要な課題となっている。そのため、TAC(漁獲可能量制度)の導入に端的に現れているように、あらゆる漁業が資源管理型漁業に移行し、その過程で、資源に見合った操業体制が構築され、漁船隻数についても現状よりかなり減少することが予想される。
一方、漁船漁業の経営は水産資源水準の低下による漁獲不振に加えて、流通コストや輸入水

 

 

 

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