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第?T章 調査研究の概要

1 調査研究の目的と進め方

1−1 調査研究の目的
北海道地区の造船所は、造船法に基づく許可事業所8社8事業所を除くと、そのほとんどが漁船の造修に依存している地域密着型の小規模・零細造船所で占められている。そのため、各造船所の経営は漁業の盛衰に大きく影響される現状にある。
一方、北海道の漁業は200海里経済水域体制の本格的定着、母川主義の国際条約化、公海での漁業規制(北太平洋における遡河性魚類の系群の保存のための条約(1992年)により、北太平洋公海でのサケ・マスの沖獲り禁止)等、国際的な規制強化により遠洋漁業の趨勢的衰退傾向が避けられないこと、また、沿岸・沖合域における漁業資源の減少に伴い沿岸・沖合漁業が再編成されたことから、ここ数年間に約430隻の漁船か減船されるなど、その業況は厳しさを増している。加えて、輸入水産物の増大や魚価低迷と相まって、漁業経営は深刻な不振に陥っている。
こうしたことから、漁業者による代船建造の発注意欲の衰退やメンテナンス費用の手控えも顕在化しており、さらに、国連海洋法条約の批准に伴う漁獲可能量制度(TAC)の1997年1月からの導入等に端的に現れている、あらゆる漁業の資源管理型漁業への移行の過程で生ずると思われる沖合漁業と沿岸漁業の漁業資源に見合った操業体制の構築により、漁船隻数については現状よりもかなり減少すると予想されるなど、漁船の造修需要は構造的に縮小状態が続くものと考えられる。この結果、漁船の造修に依存する割合か高い北海道地区の中小造船所に与える影響は極めて深刻なものとなっているのが現状である。
従って、北海道地区の中小造船所の経営改善及び活性化のためには、漁船の造修需要の減退を補う新たな事業分野・新規需要の開拓等が不可避的な命題となっている。新たな事業分野・新規需要としては、北海道経済が公共部門への依存度が高いため、一定の需要は期待できるが、その工事量の一部が道外へ流出している作業船等及びこれからの漁業としてその推進が求められている資源管理型漁業に対応する漁船等が考えられる。
以上の認識に基づいて本調査研究は、
●海洋土木に使用する作業船等
●資源管理型漁業に対応する漁船等
の2つの分野において新規需要を求めるため、両分野に関する外的環境、業界の実状を把握し、作業船等については、北海道地区の中小造船所がこの分野に進出するに当たっての課題を踏まえ、今後の経営方針を検討するとともに、モデル造船所について経営に係る具体的提言を行うこととし、漁船等については、開発テーマを選定し、漁船等の概要計画を検討することを目的とする。
なお、本調査研究で用いる「資源管理型漁業」とは、「つくり育てる漁業(栽培漁業と養殖漁業)」及び「資源の再生産が可能な漁業」を指すこととする。

 

 

 

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