その他に詳細設計段階で、甲板、隔壁、甲板室などの構造図を画き、これらが工作図のもととなる。
1.1.4 この指導書の意図するところ
この指導書は、船体強度理論のあらましを説明し、これと船体構造との関係を保ちながら、構造図面の画き方を解説することとした。船殻設計の最終目標は良い構造図面を描くことにあり、良い構造図とは、強度、剛性を満足し、軽量で工作性のよい船殼構造を、分かり易く図示したものである。
この指導書で引用する船は199トン型貨物船を主とするので、さきに発行された、小型鋼船建造要領−設計要領−(昭和43年3月)を参照されたい。またその一部は、学習指導書第3章にも説明がある。
1.2 構造基準と船級協会規則
1.2.1 構造基準の必要性
鋼船の船体は外側は複雑な曲面をした都分が多く、内側には肋骨、防撓材、縦通材、梁、桁、隔壁などがあって複雑に入り組んでいる。これを陸上の建築物、橋梁などに比べると、船体はまず動くものであるという点で根本的に異なっている。しかもその活動範囲は海上であるため、船体にどのような大きな力がかかるかも未だ正確に知られていない。さらに船舶は多数の人命と貴重な貨物、財産をあずかるものであるから、高度の安全性が要求される。
構造強度理論も、船殼全体の応力を一挙に計算できるほど厳密には進んでいない。現在の理論は後述のように近似的な解を与え、実績船との比較強度を求めているにすぎない。したがって、船殻構造の計画を行うのに、一々構造強度の計算をしていては手間がかかるから、従来の実績を解析した結果をまとめて、数式または表の形にしておき、必要に応じて部材寸法が得られるようにすれば非常に便利である。
一方、乗組員の安全と船体、積荷の安全を確保する船舶安全の立場と、船主、荷主、保険業者の利益を守る商売上の立場から、船殼構造の満足すべき最低基準が必要となる。
各国には第1.1表に示すような船級協会があり、それぞれ構造規則を定め、図面承認、工事中検査、完工検査および定期検査に合格したものに船級を与えている。構造規則の内容は鋼材の規格、各部の構造および部材寸法、工作についての指示などが盛っている。
船級協会とは別に、わが国の運輸省は船舶安全法にもとづいて鋼船構造規程を定めているが、小型鋼船については小型鋼船構造基準が別にあり、また鋼製漁船については漁船協会で作製し、運輸省で認められた鋼製漁船構造基準がある。総トン数20トン未満(除く国際航海旅客船)の船舶には「小型船舶安全規則」が、また、長さ24m未満の鋼製およびアルミ製の軽構造
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