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1.3 労務管理
 
          1.3.1 一 般
         
        工場において、設備について重要なものは、労務管理である。いかに設備が立派で機械化されていても、ここで働く従業員がいなければ工場は成立しない。また、いかに立派な計画を立てても、生産目的に向って従業員が結束しなければ効果的な生産活動は期待できない。ここに労務管理の意義がある。
        従業員の確保は、その工場のある土地柄によって大きく支配される。特に中小造船所はその傾向が強い。労務者も“なま身”の人間であって、単に機械力か労働力の提供者ではない。それだけに、肉体的な環境はもちろん精神的な環境もよくしなければらない。独身者でも、妻帯者でもその個人の周辺には色々な人間関係が拡がっていて、その環境は複雑を極めている。
        従業員の数が少ないうちはまだよいが、工場も大きくなるにしたがって管理者を含めて従業員の数も増加してくる。これらの従業員の生活環境を正しく維持することが問題になってくる。しかも、この生活環境の良い悪いが生産活動に大きく影響してくる。
        生活環境とは、給与の多少、社会保障の有無はもちろん工場の休憩所、食堂、洗面所、浴室、更衣室から宿舎、住宅、医療設備、厚生施設、娯楽といった設備および人間関係に至るまでの従業員が気持よく働くことができる必要条件のあり方を意味する。特に企業の業績、大小あるいは地域差からくる環境の不釣合に対する従業員個人の満足感の相違がこの労務問題をさらに困難なものとしている。
        従業員の組合の結成、またこれらに対する外部団体からの働きかけとか、一見華やかに見える他の職場からの誘惑などを解決して、従業員の精神状態の安定すなわち、安心して働ける職場を作ることが労務関係の一番むずかしい問題である。
        労務管理の主体は環境の管理である。働く者の環境をいかによくするかが管理の中心であるが、環境の改善には非常に多額の経費がいるので、生産性とバランスのとれたものにすることが大切である。
        環境管理は前述の生活環境のみではない。工場内の整理、整頓に始まる。衛生管理から安全管理と発展しなければならない。冷暖房はもちろん、災害、ガス中毒、等の防止、足場、通路の安全設備等と広範囲な対策が必要である。これらは設備管理の面とも大いに関係がある。
        最近の新しい工場では、医療・保健設備はもちろんのこと敷地内を極度に利用して緑地帯を造り、池や噴水まで設けて環境の改善につとめ、従業員の精神的、肉体的休養のかてとしているところが多くなったが、これが環境の整備が大きな目でみて生産性の向上へとはねかえってくるからである。
        労務管理には給与、厚生等のほか、人事関係がある。この問題は、精神的な心理作用がから

         

         

         

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