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鉄は銅より腐食しやすいが、亜鉛は鉄よりもイオン化傾向が強く腐食しやすいので、図のように電流が流れて、亜鉛が腐食し鉄や銅の腐食を防ぐことができる。
防食用亜鉛の取扱いは次の注意が必要である。
a。不純物を含まない純良な亜鉛を選ぶ。不純物があると防食亜鉛の中だけで電流が流れて防食の効果がなくなる。
b.鉄に完全に接着させること。取付面にゴムパッキンを入れて浸水腐食による密着不良を防ぐ。
密着不良では亜鉛から鉄や銅の方に電流が流れないので、鉄を保護する役目が果たせない。
c.ときどき取り外して、表面のさびや汚れを取り除くこと。油などで汚れると亜鉛から液の方に電流が流れなくなるからである。

?シリンダの冷却温度を必要以上高くしない。水温が高過ぎると、水中に気ほうが発生しやすくなり、同種金属でも電気腐食を生ずるからである。
?シリンダを清水冷却する。清水は海水と異なり電気抵抗が大きいから電気腐食を防止できる。

5)シリンダライナのキャビテーション

ライナ外周面、特にクランク軸直角方向にキャビテーションエロージョンを生じることがある。これは、ライナの振動によりライナ表面に真空の気泡が発生し、急激につぶれる時のエネルギーでライナ表面が侵されるもので、激しい場合は、相対するシリンダの内面も侵されることがある。
浸食が深いものは、使用中に貫通するおそれがあるので交換しなければならない。
この原因として、冷却水圧力の圧力不足、防食亜鉛の消耗、異常燃焼、ピストンライナすき間の過大などがあるが、対策についてはメーカーと相談すること。

3)シリンダヘッド

シリンダヘッドは機関の頭部に位置し、吸排気ポート、吸排気弁、燃料噴射ノズルまたは副燃焼室を内蔵する複雑な構造の部品である。シリンダヘッドの下面は爆発力を直接受けると同時に冷却水側、燃焼室側との温度差による熱応力を受ける。このため燃焼面の弁間部や弁と副燃焼室口金との間に熱疲労による亀裂が発生し易い。この対策として冷却水通路、ヘッドの厚さ、弁間距離など構造的な対策と同時に使用材料を鋳鉄から鋳鋼やニッケル、モリブテンを含む、特殊合金鋳鉄が出力率の高い機関に使用されてきている。
シリンダヘッドとシリンダとの接合面からのガスもれも最高圧力の上昇とともに生じ易く、ヘッド自体の剛性と耐久性のあるパッキング材料の使用が配慮されている。
したがって、機関の分解時には、特にこれらの点に留意して点検することが必要である。

 

 

 

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