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4. 日本の現状と今後の課題点

近年、日本においても小中学校の中で、環境教育の推進に向けた取り組みが試みられている。文部省では「環境教育指導資料」を、また各自治体においても副読本や指導資料が発行され、その中には環境教育の実践事例として、様々な環境教育プログラムが掲載されている。
こうした各自治体の推進策もあって、各学校でも生活科や理科、社会科、特別活動等の中で地域に視点を向け「河川でのゴミ拾い」等のクリーン活動を実施したり、自然観察を行ったりと様々な取り組みがなされている。
今回、紹介したウィスコンシン州との事例との比較の中で、大きな違いとしてはプログラムの目標の設定とそのプログラムの内容にある。
プログラムの目標に関しては、前述したとおり、「知覚認識」から「市民行動の経験」まで、環境教育を進める上で重要となる目標を各学年ごとに設定し、その上で、それぞれの学年での教科の中から環境教育の要素を抽出し、当てはめている。日本の場合は、多くは、それぞれの学年の教科の中での検討しかされていないため、学年や教科を通し継続的な環境教育がなしえていないといった現状があると共に、多くのプログラムがウィスコンシン州でいう「知覚認識」や「知識」レベルに集まり、「市民行動の経験」まで子供たちを導いていないといった傾向が強い。
また、ウィスコンシン州での際立った特徴としては、この他に各プログラム(アクティビティ)の内容に関しても、ただ体験をするだけでなく、
各学年のレベルに応じ、?@疑問点・問題点の整理、?A書籍や行政、環境NGO等からの情報の収集、?B現況の認識、?C改善策・解決策の検討、?D改善策・解決策を実施した場合の効果の検討、?E経験、?F振り返りといった一連の流れの中で、展開を図っている。これは子供たちの自主性を促すと共に、地域や学校内のことテーマとすることにより、抽象論ではなく、より身近でかつ具体的な事柄を題材に、子供たちなりに考えさせるといったことが可能となる。その上で、子供たちは市民行動の技能を身につけていくことになるのである。
これは、まさに現在日本の教育界で求められている「子供たちの生きる力の育成」であり、今後各学年、各教科の中で体系だった環境教育プログラムを確立していくことがその解決策のひとつとなると言える。

 

 

 

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