動できる人づくりの意に添って、進められているカリキュラムと言えよう。 ふたつ目は、重点的に取り扱うかどうかという差はあるものの、各学年において知覚認識の育成(関心)から市民行動能力の経験(参加)までを扱うよう、配慮していることである。例えば「市民行動の経験」においても、小学1年生からその年齢にあわせた行動のあり方を提示しているのである。 (2) 各教科における環境教育 日本における義務教育で扱う環境教育は、欧米と同様に「一部の教科で行うだけではなく、多くの教科、道徳、特別活動を通して行うことが大切である。」(文部省,1991)と明記されている。しかしながら、2章で述べたアンケート調査からもわかる通り、日本では「(各教科で)環境教育を行う時間がない」という状況を理由に、多数の教員が学校で環境教育に取り組めていないのである。 環境教育は、前述したとおり、生活科や理科、社会科を中心に進めるのではなく、社会的、経済的、文化的、美的視野等が必要となってくることから、現在の義務教育で扱っている全ての教科に環境教育の要素はほとんど含まれていると言って良い。つまり、既存の各教科領域の目的と目標が達成されれば、必然的に環境教育の目標も達成されるということになる。 では、日本において、これからも従来通りの授業を進めていけば、環境教育の目標は達成されるのだろうか。言うまでもなく、現況を見る限りは今までの学校教育の中では環境教育の目標が達成されているとは言い難い。現状では、授業を進める際に、いかに各教科の中で環境教育の要素を見いだし、子供たちに強調して伝えられるかどうかという視点が多くの教員の中で育成されていないからである。 教員が、各教科の中から環境教育の要素を見いだせるか否かは、環境教育の目的と目標をどれだけ認識しているかによる。それを踏まえた上で、各教科、各学年で体系化の図られた環境教育が初めて可能となるのである。例えば、通常は室内にて教科書や副読本を用いながら授業を進めているものを、環境教育の要素を題材に置き換えてみることでも良い。算数の「長さ」の勉強をする単元では、野外に出て自然のものを教材に長さの授業を試みる。また、面積を扱う単元では、オオタカの繁殖を可能とする最低限必要な森林面積を題材に授業を進めてみると言ったことも可能である。
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