第3章 環境教育の推進体制
日本においても事業計画の作成は、教員の手腕に係っており、当然のことながら、環境教育を推進していくには、学校教員の資質をいかに向上し、またバックアップをしていくかが決め手となる。そのためいかに教員を支援していくかが、その国の環境教育に対する姿勢を現しているものといえる。今後日本が環境教育を効果的に推進していくための参考として、アメリカ合衆国と北欧諸国において、環境教育に関連する法律がどのように整備されているか、行政が環境教育のガイドライン等を発行するなどの支援の取り組みをどのように行っているか、さらに環境教育を行う場としてのネイチャースクールなどの施設について今年度行った最新の調査結果から紹介する。また、アメリカ合衆国において環境教育を推進する際に地域と学校とがいかに連携しているかについても実際の事例を引きつつ解説する。 1.法律
ここでは、環境先進国といわれるアメリカ合衆国や北欧諸国では、環境教育をどのように位置づけているのかを、法律面から紹介する。アメリカ合衆国では、環境教育の推進体制を整えるための支援について合衆国法や一部の州法により定めている。北欧では、法律における表現は国によって多少異なるものの、教育法や学校法で環境教育を行うことが定められているので該当する部分を中心に紹介する。 (1)アメリカ合衆国 アメリカ合衆国における環境教育の歴史的背景については、昨年度の報告書「持続可能な社会に向けて〜日本の環境教育への提言」で詳しく述べたので、ここではその概略を述べることとする。 1960年代後半まで1世紀ほどの間、アメリカにおける環境教育は「自然学習」が主流であった。その間、1930年代の大恐慌時代に大規模な干ばつと農地荒廃、土壌流出によって農作物が育たない被害が何年か連続して起きた。その結果、自然環境(特に土壌)の保全が重視され、学校教育でも主に農民教育としての環境教育が取り組まれるようになった。また、1962年にレイチェル・カーソン著の「沈黙の春」が発刊され、世界に大きな衝撃を与えた。 「沈黙の春」は、米国の海洋生物学者であるレイチェル・カーソンが五大湖の汚染による環境影響を調べ、その研究結果をまとめたものである。ダイオキシンやDDT、PCBなどの化学物質が発ガン性や直接の毒性を持ち環境を破壊していると警告し、アメリカ国内でも環境政策、知識層、市民団体に至るまで多大な影響を与え、社会思想の大きな転換点となった。さらに、1969年の全米環境政策法の成立や1970年にはじまった「アースデイ」、同年世界初の環境教育法制定(1981年廃止)などを経て、1990年には新しい全米環境教育法が制定されるに至った。この全米環境教育法により連邦政府の環境保護庁(EPA)がリーダーシップをとって環境教育を進めていくことが示され、多くの州でも本格的に環境教育が
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