(2)日本と欧米の環境教育の認識の違い 欧米で進められている環境教育、言い換えれば持続可能な社会をめざした教育は、私たちの生存基盤である自然生態系を踏まえ、現在の社会・政治・経済等を評価すること、持続可能な社会をつくるために市民としての義務や責任を果たすこと等に念頭におき、カリキュラム等を作成する際の方針が打ち出されている。 日本の環境教育の現状を見ると、小中学校で行われている環境教育の大部分は、環境に配慮した個人レベルの生活の改善、あるいはリサイクルに偏重したもの等、アンケート結果を見ても、社会に向け市民行動を促すような取り組みは少ないといった傾向が見られる。また、地域にむけた取り組みとしてゴミ拾い等の清掃活動も行われているものの、内容を見るとその大部分の活動は、子供たちにとっては一過性のものとなっており、単に作業を経験したということに終始してしまっている。すなわち、「市民行動の技能の育成」の観点から考えれば、欧米で行われているように、例えば、子供たち自身が、ゴミを捨てることに関連する様々な問題について認識し、ゴミ問題の根本的な原因を模索し、さらに地域住民や環境NG0・自治体と関わりを持つ中で、効果的かつ効率的な解決策を検討する等、問題を発展して考えさせるような段階にまでは至っていない。 日本のこうした現状は、ひとえに環境教育の指導者に対し、環境間題とは何か、持続可能な社会とは何か、生態系とは何なのか、市民行動の重要性等といった環境教育の本質が、情報として広く伝えられていないことに原因があると考えられる。そして、このことが、各地で生態系撹乱を引き起こす誤った活動として問題視されている「コイの放流活動」や「自然の中での園芸外来種による花いっぱい運動」、「他の地域で採集したホタル等の昆虫の放虫活動」等、子供たちに誤った自然観を植え付けかねない活動を引き起こしているのである。
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