(3)環境行動を引き起こすために ここまで、理論的に持続可能な社会のための教育を見つめてきた。この章の最後に、現在様々なかたちで、環境に対して行動を起こしている者たちのきっかけは何だったのかを分析している事例があるので、紹介をしておく。H.Hungerfordたちは、環境問題について行動を起こす動機・動員となるものを様々な調査結果から3段階に分類し、各段階で鍵となる要素を指摘している。 ■環境行動を引き起こす動機(Hungerford,et al.,1992) 第1段階(初歩的段階)では、環境への感性あるいは敏感さが環境に対する好意的な関心の土台になると見なしている。そして、環境について敏感になるためには、自然との頻繁な交流・接触、野外での個人的あるいは友人と一緒の経験が重要である。 また、自分がよく訪れていた場所が破壊されるのを目撃して好きだった自然地域が失われたことについての感情が引き起こされる。家族やその他の手本になる人物、特に先生が環境への感性を養い、奨励することが重要である。 自然に関する本などに容易に接し、読めること。 環境への豊かな感性は12歳くらいで身につけるようなので、小学校でこの問題についての教育プログラムを作って教えることが必要である。 この環境についての感性が肯定的な環境行動に導く主要な要素である。 次に、生態系についての知識を持っていることは、健全な意志決定をする際に常に必要な前提条件である。 知識だけで環境への良き行動につながるわけではないが、環境問題に取り組むきっかけにはなる。但し、感性に比べれば、弱い動機である。行動への要素となる他のものでは、子供達の性別による性格の違いとか、汚染やテクノロジーや経済への態度によっても左右されるが、どの程度の影響力があるかは明確にはなっていない。 第2段階は、所有者意識、自分自身の問題と捉えるようになる段階であり、これに影響を与える要素は主要なものとしては、問題についての深い知識と環境問題への個人的な関わりである。特に経済的・金銭的な利益がかかっているときに環境や白然破壊によって打撃を受ける場合や、生態系を撹乱したりする結果起こることの重大な意味をよく理解している場合は、積極的に自分自身の問題として行動することにつながる傾向がある。 第3段階は、実技獲得の段階で、知識と問題解決の能力(技能)とが主要素であり、特に技能のレベルが知識よりも実行と解決にとって重要である。また、コントロール評価(自信)、つまり自分の行動が解決にとってどれほど効果的な影響力があるかどうか、の自己
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