5.持続可能な社会を構築するために 持続可能な社会の実現を目指すことについては、すでに世界の共同歩調として、国際社会では常識化している。しかしながら、日本社会では、行政システム、産業界、個人の生活のどれをとっても、その場限りの浪費型社会が根本的にはまだ見直されていない。日本がこれから200年、300年のちも社会と人類の生命を存続していこうと本気で考えているとは、とても考えられないような矛盾点が、残念なことに日本社会の中には簡単に見つけることができる。そこでまず、社会経済システムの面から、日本社会の現状の問題点を捉えなおし、そこに必要な自然生態系の全体的保全・復元への近道、そして持続可能な社会づくりをめざした人材育成の順に、解決への道を探ってみる。 (1)社会経済システムの転換 人類の歴史の中で、地球生態系に対して圧倒的に強大な力を持ち始め、自然生態系に対し劇的で後戻りできない規模の破壊を行いはじめたのが、この20世紀である。 第二次世界大戦後のいわゆる東西冷戦構造の中で、世界は半世紀近くにもわたって、旧ソ連とアメリカという二つの超大国の拡大対抗路線の中に飲み込まれてきた。兵器、宇宙、情報関連など、さまざまな産業に天文学的な予算が使われ、その中で生まれた優良な耐久性新素材や、リモートセンシング技術、衛星通信などを始めとする数多くの新技術の応用の恩恵に浴し、社会では軍事こそが文明社会と経済発展を進めるとして歓迎する向きすら珍しくなかった。 1950〜1970年ごろまでの世界は、一部の経済先進国家が急速な経済発展をしてきた時代である。その裏には、南側諸国からの資源や食糧を、搾取に近いといっても過言でないほど安価で、独占的に利用してきた仕組みがある。この南側諸国からの安い食糧や燃料、原材料資源の供給は、北側先進国での経済優先構造をエスカレートさせ、大量生産から大量消費までの、いわゆる浪費型社会の特徴を顕著に現した時代でもある。 今、1990年代後半を迎え、世界は持続可能な社会へ向け、大きく動き始めている。しかし資源の少ない日本社会に目を落とすと、輸出入のアンバランスはエスカレートし、10年ほど前には50%近くあった食糧自給率は、さらに急速に低下し、40%台を確保できない時代に突入している。このような輸出入のアンバランスは、国民一人当たり年間5tの輸入超過に換算できるという試算もあり、深刻さは増す一方である。日本の代表的輸出産品には、自動車や電化製品などがあり、これらの素材資源の輸入もあるが、輸入超過になっている最大原因は、石油関連資源、人間の食糧と、飼・肥料である。これらはすべて生物が作り出したものであり、日本の環境汚染やゴミ問題に、この膨大な輸入超過が大きな影響を及ぼしていると捉えることができる。 最近、リサイクル型社会ということがマスコミに多く取り上げられると同時に、学校教
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