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序章 持続可能な社会に向けて・調査と成果概要

 

1.本書の目的と特徴

「持続可能な社会に向けて・2」平成8年度報告書は、日本財団の助成を受け、国内外の環境教育に関わる情報収集、及びそれを元にした今後の社会の枠組みづくりについての研究成果を1冊にまとめたものである。
以下、本報告書の目的と特に際だった特徴、独創的な新しい視点について概要をまとめる。
(1)日本国内での環境教育の立ち遅れの改善を日的とする
従来、環境教育を通した次世代の社会改善のための人材育成は、限られた情報の中で断片的になる傾向が多く、体系的なものはできていない。また進んだ教育システム及びカリキュラムについては、海外の環境教育先進国に求める必要があるため、日本社会に合った教育システムの構築には至っていなかった。
また近年、「環境教育」という用語が先行して日本国内で普及しているため、環境教育として行われている教育活動であっても、環境教育の本来の目的である、環境への影響を最小限に押さえるライフスタイルを個人レベルで自ら推し進められる市民の育成や、環境保全や生態系の保護に対する社会的・組織的な行動者の育成を必ずしも念頭に置いていない活動も依然として多い。環境問題の情報や自然にいかに多く触れても、実際に社会人としての優れた状況判断や価値判断能力、社会を改善していく行動を引き出すものでなければ、効果的な環境教育とはならない。
本書は、これらの点を踏まえ、海外の最新の情報、基本方針、カリキュラム、具体的プログラムのほか、環境教育を社会に浸透させていった行政等の取り組みのプロセスを洗い出し、改めて日本社会への体系的環境教育の構築を目指した研究報告書である。
(2)環境問題の解決のための具体化
近年、海外の優れた環境教百フログラムの翻訳紹介などが教育関係書籍の中に見られるようになり、一見環境教育の質の高さは世界に追いついてきているようにも見える。しかし、教育プログラムだけがあっても、環境問題の社会での解決がもたらされるわけではない。環境教育で到達目標とされてきている行動者の育成、活動者の組織化、こうした市民の力と行政とのパートナーシップの構築、具体的な事業化など、机上または野外の体験教育から、社会での具体的成果への転換を行っていくには、プログラムの提供だけでは不十分である。
欧米諸国では、市民活動や、行政と市民との連携の中で、さまざまな環境教育の成果が

 

 

 

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