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5-2. 林床植生と環境要因

ハンノキタイプ林分の林床型は地下水位によってヨシ型林床とクサヨシ・カナムグラ型林床に分けることができた。地下水位が浅く頻繁に冠水が起こるような立地では過湿に強い抽水植物のヨシが優占するようになると考えられる。ヨシ型林床は他の林床タイプに比べて窒素量が有意に低い値をとっていた。これは土壌が過湿なことによって嫌気的状態になりやすく、このためリターの分解が進まず窒素量が比較的小さい値になったためと考えられる。
クサヨシはハンノキタイプ林分の3つの林床タイプに広く出現しており、ハンノキ林の標徴的な林床植物であるといえる。宮脇(1985)にも、このクサヨシやセリ(Oenathe javanica)、ヨシやスゲ類(Carex spp.)などがハンノキ林分の林床植物としてあげられている。このクサヨシが優占するクサヨシ型林床は、地下水位ではカナムグラ型林床とほぼ同じ値であった。しかし、カナムグラ型が出現したのは株分の分断化が進んだ糠田橋周辺の杯分に集中していた。カナムグラタイプは、林縁のツル植物であるカナムグラの優占度が高いということを除げば、クサヨシ型林床の種組成とかなり類似していた。外分の断片化によって林内まで光が届くようになり、カナムグラが林内まで侵入してクサヨシ型であった林床の上を覆い、カナムグラ型の林床が出現したと考えられる。アズマネザサ・ジャノヒゲ型林床は上記のハンノキタイプ林分の林床とはかなり異なる組成であった。このタイプの林床で優占するジャノヒゲやコヤブラン(Liriope spicata)、アズマネザサ、チヂミザサ(Oplismenus undulatifolius)といった種は中生立地の林床でよく見られる種である。しかし秋ヶ瀬公園内のクヌギタイプ林分の林床では湿生立地に出現するチョウジソウなども出現し、完全に中生立地ではないプロットもあった。地下水位が深いことに加え、木本層の個体密度が高いことによって林内が暗くなり、カナムグラなども侵入できないことなどが環境要因としてあげられる。

 

 

 

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