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4−2. 河畔林の分布と環境条件
ここまでは荒川中・下流域でみられたハンノキを含む河畔林の種組成と群落構造についてみてきたが、ここでは荒川中・下流域でのハンノキ林の分布状況、および種組成や構造の違いをもたらす環境要因についてみていく。
4−2−1.ハンノキ林の分布状況
今回の調査地域の中で最上流部の熊谷大橋周辺から最下流部の笹目橋までの全調査地域を見渡すと比較的まとまった面積で残存しているハンノキ林がほとんどないことがわかる。さらに小面積のハンノキ林でさえ分布している地点が非常に少なく、かつ集中的に小面積のハンノキ林が分布している地点間の距離は大きく離れていた。つまりハンノキを始めとして、ハンノキ林にのみ特徴的に分布する種では、非常に小規模な局所個体群が他の局所個体群から分断化されて分布しており、荒川流域での個体群が今後とも維持されるには危機的状況であると言える。
次に特徴的な分布のみられる地域毎にハンノキ林の分布状況をみてみる。熊谷大橋周辺から荒川大橋周辺は、荒川中流域に当たり砂礫河原が広がっている。ハンノキ林のような富栄養で湿性な土壌が堆積した立地に形成される森林はこうした貧栄養な砂礫河原には形成されにくく、熊谷大橋周辺や荒川大橋周辺にはハンノキ林は出現していなかった。
その下流側の糠田橋周辺では非常に小面積の断片化したハンノキ林がパッチ状に分布していた。糠田橋の左岸上流側にはパッチ状の外分がやや集中して分布する場所もみられたが、下流側や右岸側では点状にしか分布していなかった。
樋詰橋周辺では右岸側の旧流路沿いおよびその周辺に比較的まとまった面積のハンノキ林が集中して残存していた。しかし、この旧流路周辺以外にはハンノキ林は分布していなかった。
羽倉橋の下流側左岸の秋ヶ瀬公園内に残存するハンノキ林は荒川中・下流域では唯一大きな面積のハンノキ林であった。しかし、その周辺はゴルフ場や農耕地となっており、この大面積のハンノキ林も他のハンノキ林からは分断されていた。

 

 

 

 

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