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1. はじめに

河川中・下流域の氾濫原は、地下水位が高く土壌が過湿になりやすいことや洪水という自然攪乱の影響を受けやすいなど特異な環境であるために、中生立地での気候的極相とは全く異なった特有な種によって構成された植生が発達する(石塚1977)。また、時間一空間的な要因によってその氾濫原での植生の組成、構造などが著しく変化することが知られている(Johnson et al.1976)。たとえば中央ヨーロッパの河川沿いの立地での群落の配置は、増水時の水位や、冠水の頻度などの環境要因によって決定され、その植生は帯状分布になることが知られている。水際から陸側に行くにしたがって、生長速度が著しく速い1年生草本群落(タデ群落など)、背丈が高く発達した地下茎を持つ多年生草本群落(ヨシ群落など)、生長の速いヤナギ低木(Willow species)林、高木性のヤナギ類や中流域以上ではGrey Alderと呼ばれるハンノキ属の種の優占林、トネリコ類(Ash species)やニレ類(Elm species)およびナラ(Oak species)類の優占林、気候的極相群落へと続く(Elenberg 1963)。日本の河川においても同様の帯状分布が見られるが、今日では堤防によって流路面積が限定されていたり、河道の整備の進行などにより洪水が減少したことによって、河畔林などの高木林の生育する範囲はごく狭いか、全くないという場合が多い(奥田・佐々木1996)。
このような河川敷内で高木性の河畔林を形成する種としてハンノキ(Alnusjaponica)があげられる。上述したように氾濫原は地下水位が高く、頻繁に冠水するとともに洪水による攪乱を受けやすいという特徴を持つ。こうした過湿条件下では根の周囲で酸素が欠乏し、根疲れを起こしやすい。ハンノキは酸素の伝達能力に優れ、根茎部へ酸素を供給することができるため、過湿な条件下でも生長することができる(Grosse & Shroder 1985)。ハンノキの更新動態については、林内では更新しないが周囲およそ30m以内に親木があり、また地表に洪水など何らかの要因によって攪乱が起こった向陽裸地において、一斉更新することが知られている(鈴木 1975)。
ハンノキ林はかつては同本全国の氾濫原に分布し、花粉分析からも日本の沖積平野に昔から広範囲に分布していたことが確認されている(鈴木 1975)。現在でも北海道の河川沿いには広い面積の林分が残っているが、上述したように急激に減少している。しかし稲作と立地を同じくするために昔から人による破壊を受け、今日では二

 

 

 

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