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こうした危機的状況を訴える声の広がりとともに、市民による河川敷の清掃や帰化植物の除去などの活動が進められるようになってきています。また河川行政も河川法の一部改正により、これまで治水・利水の開発に環境を加え、自然環境の保全を重視する方向へと方針が転換されました。市民・行政ともに、水辺の生態系の保護・復元・創出方法の確立を模索しているところといえます。
水辺の生態系は水域と陸域という大きく異なる2つの系の移行部に位置し、水分や土壌などの環境条件の微妙なバランスの上に成立しています。また水辺は洪水という周期的な自然撹乱に大きく影響される場でもあります。そのため水辺の植物群落を保護・保全・復元するには、群落および構成個体群のハビタット(生育場所)の環境条件を正確に把握した上で進められることが必要です。しかしながら、これまで水辺の植物の生育環境を調べた研究は少なく、情報が十分に蓄積されているとはいえません。
私たちの会では、そんな状況の打開に少しでも貢献すべく、荒川中・下流域に残存するヨシ群落およびハンノキ林を対象に、種組成や群落構造と環境条件との関係や、更新動態等を明らかにすることを目的とした調査研究を行いました。また、イギリスにおけるヨシ原の管理技術を学び、水辺の植物群落の保護・復元方法について検討を加えました。まだまだ未熟なものではありますが、群落保全の足掛かりになればと願い、本レポートをもって公表させていただく次第です。
最後になりましたが、本レポートの作成にあたり快く資料を提供していただいた建設省荒川上流工事事務所をはじめ多くの方々に深く感謝いたします。なお、本レポートは(財)日本船舶振興会の助成を受け刊行いたしました。心から御礼を申し上げます。
平成9年3月
(財)埼玉県生態系保護協会
会長 池谷奉文

 

 

 

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